『クレイジー・リッチ!』映画レビュー

女性なら、夢の王子様に出会って、素敵な結婚をする夢を見たことが一度はあるはず。でも、現実には夢の王子様にも問題がある。クレイジーなほどリッチなその家族と付き合うのも一筋縄ではいかない。自分の心も揺れ動く。極めてゴージャスな世界を描きながらも、恋愛や結婚について、考えさせられ、強く心に刺さるのが『クレイジー・リッチ!』だ。

『クレイジー・リッチ!』は、よくあるガールズムービーに思えるかもしれない。ところが、全くそうではない。意外にも男性の観客に好評のようだ。観客席の隣に座っていた男性が、途中で鼻をすすり、最後にも泣いていたぐらいだ。ファンタジックなほどの超セレブリティの世界を描いていても、恋愛と結婚と相手家族との付き合いを真正面から逃げずに描いているリアルなところが、他のドリーミィな作品との格の違いを表している。

中国移民の子供で、大学で経済学を教えているレイチェル(コンスタンス・ウー)は、恋人のニック(ヘンリー・ゴールディング )から、いとこの結婚式に出席するため彼の故郷のシンガポールに一緒に行こうと誘われる。カフェで写真を撮られたニックの帰郷のニュースは、あっという間に世界に広がっていく。彼の家族も含めて。

レイチェルは知らなかったけれど、ニックは、シンガポールの大富豪の跡取り息子で、だれもが結婚したいと願う超セレブリティ、アジアナンバーワン、バチェラーだったのだ。レイチェルはその事実を、シンガポール着いて早々思い知らされる。恋愛も結婚も、彼の母(ミシェル・ヨー)に認められることも、厚い壁となって彼女に立ちふさがる。そして無数のライバルたちも。果たして彼女は、ニックとの関係を深めることはできるのか。

原作は、ケビン・クワンの『クレイジー・リッチ エイジアン』。監督は、ジョン・M・チュウ。『ステップ・アップ』シリーズや、『G.I.ジョー バック2リベンジ 』、『グランド・イリュージョン 見破られたトリック 』など主にヒット作の続編を手掛けてきた、そつのない職人監督だ。今回の『クレイジー・リッチ!』は全米ヒットを受けて、三部作が予定されている。ジョン・M・チュウ監督は、自身が手掛けた一作目の監督のみならず、続編にもかかわることになるだろう。今回の作品も十分チャーミングではあるけれど、さらに素敵な作品になることが大いに期待できる。

『クレイジー・リッチ!』は、人生で一番幸せなことは優しくあること。そして優しくされることということをしっかり思い出させてくれる必見映画だ。

(オライカート昌子)

クレイジー・リッチ!
(C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND SK GLOBAL ENTERTAINMENT
2018年9月28日(金)新宿ピカデリー他 ロードショー
監督;ジョン・M・チュウ
原作:ケヴィン・クワン
キャスト;コンスタンス・ウー(レイチェル・チュウ)
ヘンリー・ゴールディング (ニック・ヤン)
ミシェル・ヨー (エレノア・ヤン)
アウクワフィナ (ペク・リン)
ケン・チョン
ソノヤ・ミズノ
ジミー・O・ヤン
ジェンマ・チャン
リサ・ルー
ニコ・サントス
ジン・ルージ
フィオナ・シェー
2018/アメリカ映画/ロマンス/コメディ/121分/配給:ワーナー・ブラザース
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/crazyrich/