『少年たちの時代革命』映画レビュー

何か事件や大きい出来事が起きても、私たちのほとんどは、断片的なニュースでそれを知るだけで、実際のところはよくわからない。わからないのに知った気になって、じきに忘れる。

『少年たちの時代革命』は、2019年の香港民主化デモを背景に描いている。雨傘を持ち、黒いシャツを着て若者たちが街を埋め尽くしていた。『少年たちの時代革命』の一番のみどころは、香港民主化デモの場にいて、参加したような気分になるところだ。臨場感あふれた映画である。

暴力を行使する権力側と、それをものともせず、ゲリラ的戦術で若い力を結集する人々。その熱い思いは、映画を貫いていて胸を突く。

この映画の本筋は、自殺を決意した少女を救うため、それまでは何のかかわりもなかった少年・少女、ソーシャルワーカーの女性が力を合わせ、香港の町を縦横無尽に走り回る。はたして彼らは、たった一人の少女を助けることができるのか。

YYは、ごく普通の17歳の少女。親友とプリクラを撮り、ゲームセンターに通い、たまにデモに参加する。ところが7月21日に、デモのごたごたの中、逮捕されてしまう。今まで知らなかった暴力と人権無視の実態は、彼女に大きな打撃を与えた。

親友は親のつてで香港を去ることを決意。YYは一人絶望と孤独の中、抗議の自殺を決意するメッセージをSNSに残した。それを目にした少年は、その場に居合わせた面々とYYを探し出すことにする。縁もゆかりもない人々が、SNSのメッセージだけを頼りに、探索する。疾走感と焦燥感、そしてほのかに凄烈な風が吹き抜ける。

実際に、デモをしても何も変わらないのではないという、悲嘆を胸に若者たちの抗議の自殺が起きていた香港民主化デモ。コロナで抑えた感はあるけれど、いつまでも語り継がれる出来事だ。

(オライカート昌子)

全国ロードショー中
(C) Animal Farm Production

ユー・ジーウィン(余子穎) レイ・プイイー(李珮怡) スン・クワントー(孫君陶) マヤ・ツァン(曾睿彤) トン・カーファイ(唐嘉輝) アイビー・パン(彭珮嵐) ホー・ワイワー(何煒華) スン・ツェン(孫澄) マック・ウィンサム(麥穎森)

監督:レックス・レン(任俠) ラム・サム(林森)
プロデューサー:伍珍珍 陳力行 任侠  
脚本:陳力行 任侠
撮影:ming 田中十一 陳家信  
編集:L2 任侠  
音楽:Aki

配給:Cinema Drifters・大福 
宣伝:大福

原題:少年
英題:May You Stay Forever Young
2021/香港/カラー/DCP/ステレオ/86分

公式HP:www.ridai-shonen.com