『ワン・バトル・アフター・アナザー』は何がすごいのか? 見どころポイント・解説・あらすじ

『ワン・バトル・アフター・アナザー』作品情報・解説

『ワン・バトル・アフター・アナザー』とは

『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、映画界の巨匠監督の一人、ポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作。世界の批評家から絶賛されました。米レビューサイト「ロッテン・トマト」では98%、「メタクリティック」では96%を獲得。IMDBでは、ポイント8,4と、ベストムービー250作の50位レベルに食い込んでいます。同じポイント8,4の映画には、『地獄の黙示録』、『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』、など。『ワン・バトル・アフター・アナザー』が歴史に残る作品となるのは確実で、来年のアカデミー賞の最有力候補になる可能性が非常に高い作品です。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』のポール・トーマス・アンダーソン監督とは


ポール・トーマス・アンダーソン監督は、「ブギーナイツ」「マグノリア」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」といった名作の監督として有名。1970年6月26日生まれ、ロサンゼルス出身の映画監督・脚本家・プロデューサーです。

1992年短編『シガレッツ&コーヒー』がサンダンス映画祭で注目を浴び、『ハードエイト』として1996年に長編に改編。それが長編映画監督デビュー。第49回カンヌ国際映画祭のある視点部門に出品されました。高校時代に撮った短編『The Dirk Diggler Story』を長編化した『ブギーナイツ』が注目を浴び、アカデミー脚本賞にノミネート。

2000年の『マグノリア』では、トム・クルーズらを起用。ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞し、2002年のアダム・サンドラー主演作『パンチドランク・ラブ』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞、2007年5作目の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』では、ベルリン国際映画祭監督賞を始めとする多数の映画賞における監督賞を受賞。

2012年のホアキン・フェニックス、フィリップ・シーモア・ホフマン、エイミー・アダムス起用の『ザ・マスター』で、ヴェネツィア国際映画祭監督賞を受賞しました。2017年の『ファントム・スレッド』では、第90回アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、作曲賞、衣装デザイン賞の6部門にノミネート(衣装デザイン賞受賞)。ポール・トーマス・アンダーソン監督は、世界三大映画祭すべての監督賞を総なめした監督です。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』のすごさのポイント


『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、滅多に見ない高評価作品。そのすごさはどこにあるのか、私なりに見つけたポイントをあげてみます。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』のすごさのポイント1 わかりやすさ

『ワン・バトル・アフター・アナザー』のすごさのポイントのひとつめは、わかりやすさ。達人、ポール・トーマス・アンダーソン監督だからこそできる、ストーリーの提示法が鮮やかです。無駄を極力省いた描写の中に、観客の「そこが知りたい」、「それでどうなるの?」という疑問を抱かせないところが秀逸です。構想から20年かけたということですが、それだけの時間をかけて練りに練った作品になっていることがうかがえます。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』のすごさのポイント2 飽きさせない

『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、一瞬も飽きさせずに見ることができます。それはリズムと余裕と技を駆使しているから。まだ見ていたいと感じてしまうのは、劇中の流れがスムースだからこそ。

全体と細部の気配りにも注目。ちょっとしたセリフやシーンが空気を一気に変えるのに驚きます。たとえば、「スティーリー・ダン」というセリフにはっとさせられました。知っている人は一気にその時代に気持ちが持っていかれるでしょう。後述する「アルジェの戦い」や「スパイダーマン」も同じような効果を感じました。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』のすごさのポイント3 コメディアクションエンターテイメントのジャンル

重厚な映画からコメディ、哲学的内容も感じさせる映画を作ってきたポール・トーマス・アンダーソン監督が初めて挑んだ現代を舞台にしたエンターテイメント作品。そこには今まで培ってきた技術のすべてが注ぎ込まれています。コメディが持つキレ、ところどころに散りばめられた印象的なシーンなど。豪華な作品となっています。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』のすごさのポイント4 最大効果のシーンとセリフ

シーンの切り替えが見事。一つ一つのシーンの役割がはっきりしていて効果をあげています。また、ハッとさせられるセリフが多いのも特徴のひとつ。最初のシークエンスでのパーフィディア・ビバリーヒルズと、ロックジョーのセリフには度肝を抜かれます。

セリフもシーンも説明的な部分がないのも特徴。必要不可欠な部分だけ残し、最小限の効果をあげています。また観客が知りたいことは省かず描く丁寧さにも注目です。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』のすごさのポイント5 愚かさと気高さ

登場人物は忘れがたい印象と個性で存在感があります。というのも、性格と行動、そして映画の中のバランスとしての役割がはっきりしてるから、行き当たりばったりの人物、信念に生きる人物。欲望に引きずられる人物などが登場してきます。

彼らの帰結も納得させる力があります。今までの人生とこれからの人生がうっすら浮かぶ手腕。主人公のボブの活動家前の人生は描かれていませんが、テレビの番組で「アルジェの戦い」が出てくるところから、想像できます。ドージョーの掲示物に「勇気、敬意、名誉」がありますが、そこから見えてくるのは、道場主の人柄と理想です。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』のすごさのポイント6 極めつけのシーンと独自の音楽

スピーディで簡潔で、切れ味のあるカメラワークの中で、ため息がつくほど極めつけのシーンが挟まれます。そんなシーンを見るだけでも見る価値を感じる人も多いのではないでしょうか。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』でまず一番に気づくのは、音楽の独自性。主張していないのに映画のテイストを固定する音楽の役割には驚かされます。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』のすごさのポイント 7 戦闘から戦闘へ

『ワン・バトル・アフター・アナザー』を貫く精神が、「良き世界を作るための活動」だとしたら、戦闘から戦闘への意味が読み取れます。世代を超えた精神の連続性と時代性、社会性とつながるテーマがエンターテイメントの中でリアルに流れている。それをしっかり伝えるストーリーが秀逸です。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』あらすじ・キャスト

『ワン・バトル・アフター・アナザー』の豪華キャスト

主人公のボブを、レオナルド・ディカプリオが演じ、宿敵の軍人ロックジョーをショーン・ペン。空手道場の謎のセンセイ(先生)をベニチオ・デル・トロ、ボブの革命家仲間をレジーナ・ホール、妻でカリスマ革命家をテヤナ・テイラー。ボブの娘ウィラ役は、チェイス・インフィニティ。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』あらすじ

元革命家ののボブ(レオナルド・ディカプリオ)は、大切なひとり娘(チェイス・インフィニティ)の命を狙われた。そして次から次へと刺客が襲ってくることに。軍人“ロックジョー”(ショーン・ペン)はなぜか、ボブの娘ウィラに執着する。空手道場の“センセイ”(べニチオ・デル・トロ)は、ボブの味方なのか? 逃げる側と追う側、入り乱れる壮大なチェイス・バトルの末にあるものとは。

ワン・バトル・アフター・アナザー
10月3日(金)全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
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公式サイト:obaa-movie.jp #映画ワンバトル