『しあわせの決断』映画レビュー

『しあわせの決断』の原題は、NO OTHER CHOICE。他に選択はない。映画『しあわせの決断』での選択は、切実で厳しい。まさかそんなと、驚いてしまうものだった。ちなみにノーアザーチョイスというセリフは最初の方にある。

会見では、『しあわせな決断』は、今までのパク・チャヌク監督の作風から比べると、おもしろい、楽しい、と参加者一同おっしゃっていた。けれど笑いのオブラートに包まれながら、今までのパク・チャヌク監督の作風の路線上にある。

冷徹な現実があり、そこから抜け出すために考え抜いた覚悟の行動。そして結果。普通の楽しさとは質が違う。厳しい現実と決断を乗り越えるための、なりふり構わない姿が見る角度によって、おもしろいとはいえるのは確かだけれど。

イ・ビョンホン演じる主人公のマンスが、失業し、すべてを失いかけ、取り戻すための行動に出ようとするときにあったのも覚悟を決めた決断だ。決断が厳しいものだけに、幸せな結果を残すのか、そうでないのか、そこが映画のみどころの一つ。

ひたすら楽しいこともある。それは俳優たちの演技合戦の力具合だ。ヒーローでありスターであるイ・ビョンホンが、普通のおじさんを鍛え抜いた表情とともに全身全霊で演じる。実力では最高度のイ・ソンミンが、新婚のころの純粋さと、その後の姿を余裕しゃくしゃくで演じる。ドラマ『二度目の決断』で悪役をじっくり演じたパク・ヒスンが、はっちゃけた役を演じる。そしてヒロイン中のヒロイン、『愛の不時着』のソン・イェジンが、そこまでやるのかと絶句するほどの姿を見せる。

俳優たちの一つ一つの動きや表情と、決断の組み合わせが、完璧な瞬間を形作る。韓国最高の監督は、出し惜しみせずに自分の構成・コントロール力を発揮。俳優たちにもそれだけのものを要求する。やるときはやる。その決断力こそ、「しあわせな決断」なんだと、思わせてくれた。最後には、素晴らしいものを見たという感慨が波のように襲ってきた。

しあわせの決断
3.6(金)TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ
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監督・脚本:パク・チャヌク
原作:ドナルド・E・ウェストレイク著『斧』(文春文庫)
出演:イ・ビョンホン、ソン・イェジン、パク・ヒスン、イ・ソンミン、ヨム・ヘラン、チャ・スンウォン
2025年 | 韓国 | 韓国語・英語 | カラー | スコープサイズ |
139分 | 日本語字幕:根本理恵 | 英題:NO OTHER CHOICE | PG-12