(C)Parallel Films (Byzantium) Limited / Number 9 Films (Byzantium) Limited 2012, All Rights Reserved
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『ビザンチウム』は、ニール・ジョーダン監督の『インタビュー・オブ・ヴァンパイア』 (1994)に続く2つめのヴァンパイア映画である。

ひとことで言うと、女子力満載ヴァンパイア映画と名づけたいような作品だ。というのも、主演のシアーシャ・ローナン、ジェマ・アータートンは、二人とも女優であり、『ビザンチウム』では、女性の強さとか弱さ、表には出てこない芯の部分が、一種理想的な形で描かれているからである。

舞台は現代のイギリス。ロンドンのひなびた裏通りや、殺風景で裏寂しい海沿いの冬の避暑地など、いかにもヴァンパイアが潜んでいそうな舞台装置が雰囲気を盛り上げる。ところどころで、ビクトリア朝時代の場面が挟まれ、二重構造になっている。

ロンドンで、ひっそりと暮らしていた、クララ(ジェマ・アータートン)とエレノア(シアーシャ・ローナン)。何者かに襲撃され、反撃したクララは、相手を殺してしまう。部屋ごと火をつけ、エレノアを連れ地方へと向かう。当初は、誰がヴァンパイアなのか、二人の女性はどんな関係なのかもわからない。エロテックで攻撃的なクララ。永遠の思春期を儚げに生きるエレノア。

クララは、ストーリーが進めば進むほど、生命力としたたかさを格段に強化していくようだ。そそられるけれど怖ろしい、悪の女神のようでもある、一方、エレノアは、自分よりかよわい存在に出会ったことで、自分の殻を破る可能性に目覚め、次第に行動力を増していく。

正反対のふたりが織りなすチグハグな美しさ、そして次第にあかされる哀しい背景に、見ているうちに心が、かき乱されていくだろう。

最後まで見ると、様々な形の愛が描かれた一風変わったラブストーリーだったんだと納得できるものの、女性の本質はこうだと宣言されているようでもある。そう感じるのは私が素直でないからだろうか。

ところで、タイトルのビザンチウムと聞いて、何を思い浮かべるだろうか。かすかに漂う東洋の香り。それとともに女性が紡ぐ独自の歴史、男性が活躍する裏側で、世界をそっと支えているようなイメージが、タイトルのビザンチウムとともに映画から浮かび上がってくるような気がする。

蛇足だが、ビザンチウムとは、ローマ帝国が崩壊し、東西にわかれた後の東ローマ帝国の首都であり、現在のイスタンブールである。映画の中では二人が滞在するホテルの名前であり、またビザンツ帝国時代の品が、ラスト近くで印象的に登場する。

                         (オライカート昌子)
ビザンチウム
9月20日(金)、TOHOシネマズ六本木ヒルズ他全国ロードショー
ビザンチウム 公式サイト http://www.byzantium.jp/