中華圏映画は、興味深い。韓国映画が、より洗練されたエンターテイメント色に際立った強さを見せてくれるのに対し、少し文芸がかっている。そして、中華圏映画のエンターテイメント系は、やりたいことをやり尽くす感満載で、洗練には程遠いものの、おもしろさはダントツだ。
中国の長い歴史と文化の分厚い息遣いが感じられるところに強く惹かれる。だから、文芸/映像作家系でも、エンタメ系でも、見る機会があれば、ぜひ見たい。
映像作家系のチウ・ションの長編デビュー作、『郊外の鳥たち』に魅かれたのは、そういう理由だけでなく、鳥が題名になっているところ。ただし鳥は映画の中ではそれほど重要な役割はなく、イメージとして拝借されている。
『郊外の鳥たち』は、地盤沈下でゴーストタウン化した都市を舞台に、地質調査グループのうちの一人、測量技師、ハウを中心に描かれている。古い都市が、新しい街に置き換わっていく。廃小学校で見つけた手紙をきっかけに繰り広げられる小学生のグループの姿と、重層的に描写される。
小学生たちの姿は鮮やかで、美しく、郷愁もほのかに漂う。鳥の巣を叩きに森へ出かけ、木漏れ日を浴びながら昼寝をし、恋模様も綴られる。帰り道では、一人ひとり抱きしめあって、別れを告げる。その様子は、やがて一人減り二人減り、街と同じように、グループ自体が姿を変えていくことを予告しているかのようだ。
はたして、小学生たちは、彼の思い出の産物なのか、それとも同じ場所の別の世界の物語なのか。測量技師のハウの世界と、小学生グループに共通して出てくるアイテムが鍵なのか。双眼鏡、測量用具、鳥、名前、犬。
幻想に寄らない現実感。だけど残り香はファンタジックという、繊細な世界の広がりは、まさしく映像マジックだ。
(オライカート昌子)
郊外の鳥たち
2018年製作/114分/PG12/中国
原題:郊区的鳥 Suburban Birds
配給:リアリーライクフィルムズ、ムービー・アクト・プロジェクト
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