『ナイトライド 時間は嗤う』映画レビュー

『ナイトライド 時間は嗤う』は、リアルタイムをワンショットで描くサスペンスエンターテイメント映画だ。感情を刺激する臨場感はハンパない。

真夜中の北アイルランド・ベルファストを疾走する一台の車。乗っているのは、主人公のバッジ。彼は、麻薬の密売稼業から足を洗うための最後の一仕事に臨んでいた。その仕事は必ず成功させなくてはならなかった。恋人のソフィアのため、そして友人のグレッグと車修理の店を出し、カタギの人生をスタートするために。

彼の作戦は単純だったが、反面、時間的制約が大きく、一つのミスが致命的だ。彼は麻薬の取引のために大金をジョーから借りていたが、その金を返せないと、足を洗うどころか、命の危険があったのだ。そして、案の定、ミスがミスを呼び、彼を絶体絶命の危機に陥れる。

スリルが満載の『ナイトライド 時間は嗤う』だが、シーンはほぼ、バッジが運転する車内の風景のみ、会話もほぼ電話のみ。リアルタイムのワンショット撮影だから、制約がある。

ところが、この制約の効果は絶大だ。まず、バッジを演じるモー・ダンフォードの魅力に引き込まれる。映画が進むにつれて、彼の内面が見えてくると、彼の先行への不安、興味が増す。

というのも、見ている側は、ワンショット撮影により、彼との一体化率が高いからだ。バッジの息遣い、焦燥感がダイレクトに伝わってくる。しかもバッジは骨のある男だ。信念は守る。その心意気に惚れる。緊張感が持続し続ける映画だが、ラストシーンの解放感の小気味よさも捨てがたい。

(オライカート昌子)

ナイトライド 時間は嗤う

(c)2021 NIGHTRIDE SPV LTD 11月18日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国ロード
> ショー
キャスト
モー・ダンフォード『悪魔のいけにえ -レザーフェイス・リターンズ-』
ジョアナ・リベイロ『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』
ジェラルド・ジョーダン『レクイエム』
キアラン・フリン『ロビン・フッド』
スティーヴン・レイ『クライング・ゲーム』

Staff
監督:スティーヴン・フィングルトン
脚本:ベン・コンウェイ
プロデューサー:ポール・ケネディ、ジョン・シルク『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』、セリーヌ・ドルニエ『ゴーストランドの惨劇』、エリック・タヴィティアン『Swallow/スワロウ』
エグゼクティブ・プロデューサー:フレデリック・フィオール『ザ・ディープ・ハウス』、モー・ダンフォード

2021年/イギリス、フランス、アメリカ/英語/97分/カラー/スコープサイズ/原題:NIGHTRIDE/日本語字幕:宇治田 智子
提供:ミッドシップ、コムストック・グループ 配給:ミッドシップ 協力:コムストック・グループ 宣伝: ポイント・セット
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