『Winny』映画レビュー 

温かみと軽さに包まれる
映画『Winny』は、ファイル共有ソフト「Winny」とそれに関連する裁判の映画だ。興味が持てないとして、映画『Winny』を見のがすとしたら、とても残念だ。映画『Winny』ほどの快作に出会えることは滅多にないから。

映画『Winny』は、開発者が逮捕され、著作権法違反ほう助の罪に問われた実際に起きた事件と、その裁判の様子を描いている。圧倒されるのは、人間ドラマ。そして、その事件の奥の世界の広がりだ。

登場人物は、「Winny」開発者の金子勇(東出昌大)、彼を弁護する壇弁護士(三浦貴大)の実在の人物。その人物像、思い、行動、あり方すべてが、映画的完成度の高さを保っている。裁判の様子とその後に続く物語に、心が強く揺さぶられる。『ぜんぶ、ボクのせい』の松田優作監督作品。

『Winny』事件の起きた2003年の空気はまだそれほど遠いものではない。だが、世界を引っ張っていくジャパン・アズ・ナンバーワンと称された当時と、今の日本の状況は、すっかり変わってしまった。その曲がり角の一つとして『Winny』の事件があったのではないか。そういう仮説が、映画を通じてうっすらと浮かび上がる。そういう社会性も描きつつ、一番心に残るのは「Winny」開発者の姿だ。極めて純粋な人物。仕事(プログラム)に対する、生まれながらのこだわりと技能。

金子は、小学生のころから本屋でコンピューターのプログラムを立ち読みし、次に電気屋へ行き、店頭に展示されているマイコンで新しいプログラムを組むのを日常としていた。大人になると、天才プログラマーぶりを発揮。「Winny」は外国で開発されたプログラムに触発され、作り上げたプログラム。2チャンネルで公開。それが悪用されるのを防ぐための修正をしようとしていた矢先に、事件が起きてしまった。

最初は、違法ダウンロードを実行した人々が、逮捕された。弁護士の壇は、「もし、開発者が逮捕されたら、弁護する」と言っていたが、逮捕されることはないとも断言していた。「ナイフを持っていた人が事件を起こしたとしても、ナイフを作った人が逮捕されることはないのだから」と。

ところが、違法ダウンロードほう助の罪で金子は逮捕されてしまう。異例のことだ。その背景に何があるのか、弁護士チームの闘いが始まる。

裁判映画というと、厳格な舞台で重みや固さをイメージしてしまうけれど、映画『Winny』はあたたかさと、ふんわりとした軽みが持ち味だ。そして、この国に貢献したい、みんなに幸せになって欲しい願いが、人物と映画を通して伝わってくる。それは時空を超えて、今の私たちにも届く。金子さん、あなたに会えてよかったという思いが、最後に残った。
(オライカート昌子)

Winny
2023 年 3 月 10 日(金) TOHO シネマズほか全国公開
監督・脚本:松本優作
出演:東出昌大 三浦貴大
皆川猿時 和田正人 木竜麻生 池田大
金子大地 阿部進之介 渋川清彦 田村泰二郎
渡辺いっけい / 吉田羊 吹越満
吉岡秀隆
企 画: 古橋智史 and pictures プロデューサー:伊藤主税 藤井宏二 金山
撮影・脚本:岸建太朗 照明:玉川直人 録音:伊藤裕規 ラインプロデューサー:中島裕作 助監督:杉岡知哉
衣裳:川本誠子 梶原夏帆 ヘアメイク:板垣実和 装飾:有村謙志 制作担当:今井尚道 原田博志 キャスティング:伊藤尚哉
編集:田巻源太 音響効果:岡瀬晶彦 音楽プロデューサー:田井モトヨシ 音楽:Teje×田井千里
制作プロダクション:Libertas 制作協力:and pictures 配給:KDDI ナカチカ 宣伝:ナカチカ FINOR
製作:映画「Winny」製作委員会(KDDI Libertas オールドブリッジスタジオ TIME ナカチカ ライツキューブ)
原 案: 朝日新聞 2020 年 3 月 8 日記事 記者:渡辺淳基
2023 │ 127min │ color │ CinemaScope │ 5.1ch
(C)2023 映画「Winny」製作委員会
公式 HP:winny-movie.com
Instagram:winny_movie
Twitter: @winny_movie