『The Son/息子』映画レビュー 優雅にクリアに描く息子との緊張と喜びの日々

親にとって、子どもは、愛する対象。愛する対象は、時にモンスターに変わる。変わってしまったのは、一体いつから? なぜ? 問いに答えるのは、むずかしい。そういうものだと、自分を無理やり納得させればいいのか。愛するモンスターに慣れ、あきらめ、日々やり過ごす。それはきっと、幸運な場合だ。

父は、どのように息子と向き合うのか。思いは伝わるのか。必死の愛情は、届くのか。映画『The Son/息子』は、ヒュー・ジャックマン主演作。息子との出来事を描いた家族の物語。

赤ん坊、若い妻、充実した仕事、絵に描いたような生活に飛び込んできたのは、別れた妻と暮らしていた、17歳の息子ニコラス(ゼン・マクグラス)だった。

彼は、学校へ行くふりをして行っていない。こっちを見るとき、にらんでいるようだ。嫌われている。元妻ケイト(ローラ・ダーン)からのSOSで、ニコラスに会いに行ったピーター(ヒュー・ジャックマン)は、一緒に暮らしたいと息子に懇願される。ニコラスの腕に自傷の傷を見つけたピーターは、妻のベス(バネッサ・カービー)を説得し、ニコラスを家に迎え入れる。

ニコラスとの関係は、緊張と緩和を繰り返す一進一退。ある日、ベスは、ニコラスのベッドの下にナイフを見つける。

語り口の自然な滑らかさが上手い。次第に引き込まれていく。それは、ヒューマンドラマというより、先行きが見えないサスペンスの強さだ。初監督作『ファーザー』で第93回アカデミー脚色賞を受賞した映像作家・劇作家のフロリアン・ゼレール監督作品だけのことはある。ちなみに、本作は自身の戯曲を映画化している。

17歳のティーン真っ只中にしては、ニコラスは極めてまっすぐで自分の思いはしっかり伝えようとする。なんて、いい子なんだろう。なぜ、大人はそれに気づかないのだろう? 傍目にはそう見えるけれど、父のピーターは、型からはみ出た部分を認めることができない。人それぞれが持つ個性を容認する余裕がないのだ。特に自分の子供だと。

ある日、ついにニコラスと真正面からぶつかってしまったピーターは、自分が、父親から言われてきたことをそっくりそのままニコラスに言っていることに気づく。

「気の向くまま、生きていけると思うのか? 責任を避け、成長を拒むのか? なぜ他の子のようにできないんだ」

思い通りにならない歯がゆさ、親の弱み、愛情を伝えることの困難さ。それを優雅かつ、清明にサスペンスフルに描く『The Son 息子』は、忘れがたい作品として残るだろう。

ところで、ヒュー・ジャックマンは、作品中でダンスも披露してくれる。難しい課題があろうと、日々の一瞬一瞬は美しく、微笑みをもって思い出させてくれることも多い。ラストに大きく印象を変える、映画の余韻を深く味わってほしい。

(オライカート昌子)

The Son/息子
3 月 17 日(金)TOHO シネマズ シャンテほか 全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
© THE SON FILMS LIMITED AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.

監督・脚本・原作戯曲・製作:フロリアン・ゼレール 『ファーザー』
出演:ヒュー・ジャックマン、ローラ・ダーン、ヴァネッサ・カービー、ゼン・マクグラス、アンソニー・ホプキンス