『レプリカズ』映画レビュー

キアヌ・リーヴスが暴走科学者になる映画が、『レプリカズ』。科学とアクションとどんでん返しのハイブリッド・ハイテンション映画だ。キアヌ・リーブスは、いつも通りのクールな風貌なのだが、今までになく熱い男を演じている。

神経科学者ウィリアム(キアヌ・リーヴス)は、戦死した兵士の記憶を機械に移植する研究をしていた。だが、その研究は300回以上の失敗を繰り返し、行き詰まりを迎えていた。そんなある日、彼は事故で家族を失ってしまう。

正気を失った彼は、同僚の助けで、家族をクローンで蘇らせようとする。だが、記憶を移植する技術はいまだ未完成。彼は愛する家族を取り戻したい一心で、研究を重ねる。それは成功したようにも見えた。だが、彼にさらなる危機が襲い掛かる。

研究室シーンからスタートしてからは、予想通りの展開となる。映画をよく見ている人なら、彼の先行きに悲劇が待っているらしいことに早めにに気づくと思う。

そのあとも、しばらくの間は、科学者映画のセオリー通りに進んでいく。

科学者映画は、「こんなことが、許されるのだろうか?」というモヤモヤ感がずっと心に引っかかるよう倫理と科学の間の葛藤が大きなテーマだ。その後、ホラー風味になったりサスペンスになったり。「その科学の利用はノーですよ」と結論付けたいがためなのか、幸福なラストになるものはごく少数。

『レプリカズ』に関しては、後半以降に、科学者映画の枠を大きくはみ出し始める。むしろアクション映画的な流れとなる。これからどうなるんだろうかと、ワクワクさせられるのは脚本の力も大きい。鑑賞後の余韻は、多くののキアヌ・リーブス映画が与えてくれる爽快感だ。

ウィリアムは、科学と倫理の間で葛藤することはない。切羽詰まっているからでもあるけれど、妻で医者のモナも同だじ。葛藤をスッポリと省いたことで、こちらも道徳や人の道や命についてわざわざ考える必要もなく、そこが、かえって新鮮に思える。

こういうクローン技術や記憶インプリントは、すでに完成していて、開示される間際まできているから、こんな風に自然にに描かれている可能性だって考えられる。クローン羊ドリーのニュースが流れたのは、今から15年も前。人間クローンも技術的には十分可能な状況だ。

先端技術の世界で本当は何が起きているのか、どこまで進んでいるのかは、報じられない限りこちらは知りようがない。考え過ぎなんだろうけど。

(オライカート昌子)

レプリカズ
(c)2017 RIVERSTONE PICTURES(REPLICAS)LIMITED. All Rights Reserved.
2017年/アメリカ映画/107分/監督:ジェフリー・ナックマノフ
出演:
キアヌ・リーヴス
(ウィリアム・フォスター)、アリス・イヴ(モナ・フォスター)、トーマス・ミドルディッチ(エド)、ジョン・オーティス(ジョーンズ)
配給;ショウゲート
2019年5月17日(金)TOHOシネマズ日比谷ほかにて暴走開始!

公式サイト http://replicas.jp/