『ザ・ウォッチャーズ』映画レビュー

『ザ・ウォッチャーズ』は、どんでん返しや意外な展開が盛りだくさんだ。製作に、『シックスセンス』、『ヴィレッジ』などのM・ナイト・シャマランが参加している。『ザ・ウォッチャーズ』の監督は、M・ナイト・シャマランの娘、イシャナ・ナイト・シャマラン。長編映画デビュー作。

最近では、二世監督も珍しくない。それぞれが個性的な作品を生み出している。次々と映画監督を生み出すコッポラ・ファミリーは、代表格として、他にもデヴィッド・クローネンバーグ監督の息子のブランドン・クローネンバーグ監督の活躍も見逃せない。『アンチヴァイラル』や、『ポゼッサー』などの作品がある。

変わり種は、歌手のデヴィッド・ボウイの息子のダンカン・ジョーンズ監督だ。『月に囚われた男』や『ミッション: 8ミニッツ』など、シャープなSF映画を送り出してきた。デヴィッド・ボウイが、宇宙的な世界を感じさせる音楽を発表してきたことと、同じを流儀を感じさせる。

二世監督たちは、単に親の七光りで活躍しているわけではなく、親が作り上げた世界と似通ったジャンルを描きつつ、プラスアルファで、発展させている。

『ザ・ウォッチャーズ』のイシャナ・ナイト・シャマラン監督も、当然のごとく、父のM・ナイト・シャマラン型の意外な展開のホラー/スリラーを目指している。親以上とは言わないものの、『ザ・ウォッチャーズ』も、映画のラストの反転する着地点は鮮やかだ。父のシャマラン監督を超える発展要素にも注目だ。。

『ザ・ウォッチャーズ』の主人公ミナ(ダコタ・ファニング)は、アイルランド、ゴールウェイのペットショップで働いている。母を失った記憶に強く付きまとわれている孤独なアーティスト。

ベルファストの動物園までオウムを届けにいく途中、車が故障し、携帯も使えなくなってしまった。迷い込んだ森は、どこまで行っても果てがなく、森を抜ける手段も尽きてしまう。そこで助けの手が差し伸べられるが、その先にはさらに奇怪な状況が待っていた。

逃げ込んだ部屋はガラス張り。夜には何者かが徘徊し、のぞき見するという。背を向けてはいけない、夜になったら外は出歩かないなどの厳格なルールを守らなければ、命を失うという。

ストーリーは、秘密が明かされるたびに、二転三転し、その都度、映画の姿が変わっていく。次にどうなる?というスリルと興奮が新たにプラスされ、ラストの衝撃は、世界を見る目を変えてしまう可能性すら感じる。

ただ、『ザ・ウォッチャーズ』は、ラストの衝撃が目的の映画だけではないところにも注目したい。それ以上のものを監督は目指している。ダコタ・ファニングという、女優を起用したところからも見て取れる。

ダコタの妹のエル・ファニングが柔らかい印象なのと比べて、ダコタは、『アイ・アム・サム(2001)』『マイ・ボディガード(2004)』『アップタウン・ガールズ(2004)』など子役の時から、存在感と目力が抜群だ。

30代になって、さらに飛躍した存在感と演技力が、『ザ・ウォッチャーズ』を強く牽引する。孤独な女性の心の傷と旅と闘いが、ホラー/スリラーの枠を超え、父の映画を超える心意気となってスクリーンから飛び出してくる。

(オライカート昌子)

ザ・ウォッチャーズ
6月21日(金)公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
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監督:イシャナ・ナイト・シャマラン
製作:M・ナイト・シャマラン、アシュウィン・ラジャン、ニミット・マンカド
製作総指揮:ジョー・ホームウッド
脚本:イシャナ・ナイト・シャマラン
出演:ダコタ・ファニング、ジョージナ・キャンベル、オルウェン・フエレ、アリスター・ブラマー、オリバー・フィネガン