『ボーン・トゥ・フライ』映画レビュー 敵は自分!ワン・イーボー主演の大型スカイアクション映画

『トップガン(1986)』、『トップガン マーヴェリック(2022)』が、アメリカ海軍のエリートパイロット養成学校を熱く描いた人気作品だとしたら、『ボーン・トゥ・フライ』は、『トップガン』に並ぶかもしれない中国産大型スカイアクション。娯楽作としての醍醐味も期待を大きく上回る。過酷にリアルにテストパイロットの世界を描き、スリルと人間ドラマの厚みも必見だ。

敵は自分自身、目的は新世代ステルス戦闘機開発。さすが中国だと思うのは、「命は大切だ。だが、軍人である以上、使命もある」と言い切ること。文字通り命がけでの開発とテストの世界が繰り広げられる。推進力は、熱い情熱と技術だ。

主人公レイ・ユー(ワン・イーボー)は、パイロットとして優れた操縦術を持っていたが、才能を持て余していた。外国ステルス機に領空侵犯されても、中国機の性能は及ばない。そんな彼に目を付けたのが、戦闘機のテストパイロットチーム隊長のチャン・ティ(フー・ジュン)。前線で戦うことしか考えていなかったレイだったが、国産ステルス機開発のための任務の価値に気づき、パイロット選出試験に挑戦する。

彼は優秀な7人の一人に選ばれ、テストパイロットとなる。だが待っていたのは、高度 1 万メートル以上の世界で、何度も繰り返される死と隣り合わせの厳しいテストだった。彼らは中国前代未聞のステルス爆撃機を完成できるのか。

主人公レイを演じるのは、ドラマ「陳情令」で大ブレイクしたワン・イーボー。『無名』では、抜群の演技と美しい存在感で度肝を抜かされた。『ボーン・トゥ・フライ』では、驚くほどの変貌ぶりを見せてくれる。

レイは、才能はあるけれど、自信過剰。それが失敗と衝撃を味わうことで、人間として成熟し、変化していく。落ち着きの中に秘めた熱い魂がだんだん精錬されていく過程は、国産エンジンとステルス機の完成への道筋と調和を見せる。

クライマックスに向けて、ドラマが盛り上がるパートは特に見ごたえがある。衝撃とともに、心に刻み込まれるシーンがいくつも畳みかけてくる。

『ボーン・トゥ・フライ』で、驚かされるのは、技術に対する真摯な姿だ。国家がスポンサーという点で、愛国心を刺激するのは当然。だが、愛国心は、こちらにも届く純度で、人間の限界への挑戦という、さらに広いテーマにまで広がっていく。技術力にプラスして、映画エンターテイメントの世界でも、中国の勢いは要注目だ。

(オライカート昌子)

ボーン・トゥ・フライ
6月28日(金)TOHOシネマズ日比谷 全国ロードショー!
配給:ツイン
©2023 Shanghai PMF Pictures Co., Ltd. & Mr. Liu Xiaoshi
出演:ワン・イーボー「陳情令」、ユー・シー『封神~嵐のキングダム~』、チョウ・ドンユィ『少年の君』、フー・ジュン
『レッドクリフ』シリーズ
監督/脚本:リウ・シャオシー
日本語字幕:河合彩子 字幕監修:浪江俊明『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』
2023│中国│北京語│カラー│シネスコ│5.1ch│128 分│原題:長空之王(Born to Fly)│映倫:G