『ロストランズ 闇を狩る者』映画レビュー 幽玄と孤独

『ロストランズ 闇を狩る者』は本格アクション・ファンタジー映画だ。子ども向きではなく、アニメではなく、続編でもない純粋なファンタジー映画。かつてはたくさん見ることができた。こういう映画が公開されてこそ、映画は豊かなものになる。

ミラ・ジョヴォヴィッチ主演、ポール・W・S・アンダーソン監督作品。世界的大ヒット作『モンスターハンター』『バイオハザード』シリーズの主演・監督コンビであり、監督は日本でも鉄板の人気がある。『ロストランズ 闇を狩る者』の原作は「ゲーム・オブ・スローンズ」「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」で現代随一のファンタジー作家と絶賛された巨匠・ジョージ・R ・R ・マーティンの短編小説。

崩壊後の世界が舞台。ミラ・ジョヴォヴィッチの役柄はグレイ・アリスと呼ばれる不思議な存在。不死なのか魔女なのか、代償と引き換えに人の願いを叶える力を持つ。彼女には代償を払う限り、願いは必ず叶えなくてはならない。時に二人の人間から正反対の願いの成就を求められることもある。今回のように。

グレイ・アリスは求められた願いをかなえるために、魔物が支配する“ロストランズ”へと旅立つことになる。ロストランズの案内人としてボイス(デイヴ・バウティスタ)と共に。しかも彼女は複数の理由で追われている。追うのは処刑人アッシュ。

今回のミラ・ジョヴォヴィッチは、強いというよりは、無垢なイメージがある。ボイスを演じるデイヴ・バウティスタも同じような純粋さを持っている。処刑人アッシュはとてもしつこいけれど、魅力的だ。ある理由でサングラスをかけた時は特に。その周囲にいる貪欲な人々も欲望に忠実なのだろう、行き過ぎるぐらいに。

テーマとして浮かび上がるのは、天涯孤独の人々が、孤独ゆえの闘いに身を投じる。ポール・W・S・アンダーソン監督は、ファンタジー映画らしく、あえて登場人物の内面を深く描くよりは、グレイの色調と遠景の世界を浮かび上がらせている。その世界は暗く、そこを純粋さを持つ登場人物が行き来する。まるで幽玄な水墨画のようでもある。

(オライカート昌子)

ロストランズ 闇を狩る者
2026 年1月1日(木)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開-
© 2024 Constantin Film Produktion GmbH, Spark Productions AG
配給:ハピネットファントム・スタジオ
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、デイヴ・バウティスタ、アーリー・ジョヴァー、アマラ・オケレケ、フレイザー・ジェームズ
監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン
原作:ジョージ・R・R・マーティン「In The Lost Lands」
2023/ドイツ・アメリカ・スイス/カラー/シネスコ/5.1ch/英語/字幕翻訳:佐藤恵子/
原題:In The Lost Lands/100 分/G