『ライダーズ・オブ・ジャスティス』映画レビュー

人生は、どのぐらい偶然に支配されているのだろうか。偶然というものは、毎日とめどなく現れる。でも、偶然を題材にした映画は、滅多にない。映画は作り上げる段階で偶然を排除する。作り物である以上、必然でないと人は納得しないからだ。

だが、偶然と必然の隙間を主題に描いた映画、マッツ・ミケルセン主演の『ライダーズジャスティス』は、実に良くできていて、スムーズに観客を乗せてくれる。偶然の危険さ、面白さが映画を彩る。

クリスマスソングが流れる中、少女が自転車を祖父にねだる。店頭にあったのは、赤い自転車。けれど少女は青い自転車が欲しい。ある場所に青い自転車が止めてある。その自転車は、鍵を壊され、トラックに載せられる。

別の少女は、自転車がなくなったため、母親に学校に車で送ってもらわなくてはならない。母親は遠地で軍の任務に就く夫からしばらく帰れなくなった、という知らせを受けたばかりだ。しかも車の調子も悪い。ちょっと落ち込んだせいで、娘に言う。「学校はさぼって、遊びに行っちゃおうか?」娘は嬉しそうに頷く。その決断が破滅を招くことを二人とも知らない。

たくさん遊んで、たくさん荷物を持って満足感たっぷりの二人は、列車で席を譲られる。それが運の尽き。テロなのか事故なのか、列車が爆破してしまう。席を譲った男、は、深い罪悪感にかられ、その出来事の真相を暴こうとする。

『ライダーズジャスティス』の主演はマッツ・ミケルセン。妻を亡くした軍人で、暴力行使力は抜群。列車爆破の真相を探るため、彼のもとに集まってくる面々は、奇妙に魅力的だ。誰もが傷と欠点を持ち、仲間で助け合い、補いあわなくては何も始まらない。彼らが偶然と必然の糸で絡み合い、まとまりあっていく様子が見事だ。

ちなみにライダーズジャスティスとは、列車爆破事故の犯人らしき男の兄弟で犯罪組織の名前。妻を失ったマークスは、復讐を遂げていくのだが、どんでん返しの後のクライマックスの壮絶さは格別。

ラストは最初のシーンと同じクリスマスソングで締めくくられる。一本の映画を見終わっただけでない、不思議な満足感を味わえるだろう。

ライダーズ・オブ・ジャスティス
2022年1月21日(金) より 新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
© 2020 Zentropa Entertainments3 ApS & Zentropa Sweden AB.
配給:クロックワークス
監督・脚本:アナス・トマス・イェンセン 撮影:キャスパー・トゥクセン
編集:ニコライ・モンベウ、アナス・エスビャウ・クレステンスン 音楽:イエッペ・コース

出演:マッツ・ミケルセン、ニコライ・リー・コース、アンドレア・ハイク・ガデベルグ、
ラース・ブリグマン、ニコラス・ブロ、グスタフ・リンド、ローラン・ムラ

2020年|デンマーク・スウェーデン・フィンランド|カラー|シネスコ|5.1ch|116分|デンマーク語ほか|日本語字幕:平井かおり|原題:RETFÆRDIGHEDENS RYTTERE|英題:RIDERS OF JUSTICE|PG12|
 公式サイト:https://klockworx-v.com/roj/