人間の根底には、イジワルがある。私にもある。きっとあなたにもある。イジワルは、深く考えないレベルで顔を出す。閉ざされた空間や、他の人には見えない状況だと、たまったイジワルが顔を出す、とんでもないイジワル空間になることもある。
『シンデレラ』映画はたくさんあるし、いじめ、イジワルが描かれている映画もたくさんあるけれど、『シン・デレラ』で描かれる最悪いじめは、あまりにもひどい。外は天国、内は地獄の密封空間。極端さは、グロテスクホラーの中でも最恐レベル。
ここまでされたら、黙っちゃいられない。作用・反作用の法則で、復讐のレベルも高くなる。残虐・爽快・尊厳。『シン・デレラ』は、心に復讐心、イジワルを抱えている人に見て欲しい映画だ。『シン・デレラ』の残虐さに耐えられるなら。
女性である『シン・デレラ』のルイーザ・ウォーレン監督が描いているだけに、女性の恐ろしさを知り尽くしたい人にもおすすめしたい。
『シン・デレラ』のストーリーは、グリム童話の『シンデレラ』に沿って描かれているが、そのアレンジ能力と、切り取り技がスマートだ。無駄はバッサリ省く。付け加えられているのは、呪物要素。
『シン・デレラ』のシンデレラこと、エラ(ケリー・ライアン・サンソン)は、格別美しいわけでもなく頭がいいわけでもない、ごく普通の女性。むしろ、義妹たちの方がずっと美しい。美しい上、欲しいものをすべて持っているのに、いじわるだ。
いざ、手段を得たとき、エラは反撃するが、注目したいのが、復讐方法。バランスが取れているので、この人はどのように復讐されていくのか興味を引く。単なる恐怖描写や、びっくりさせるチープな造りではない。チープな部分もきちんと残されているのもご愛敬だ。
驚かされるのは、ラスト。予想外に大きなテーマが襲い掛かる。とってつけたように見えないことはないけれど、これがあってこその、『シン・デレラ』。
私はラストに気持ちよさを感じた。これだけのグロテスク満載の映画なのに意外な読後感た。普通の女性が、(男性もだ、もちろん)秘めている力と、本音を侮ってはいけない。
シン・デレラ
10月25日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
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監督・製作:ルイーザ・ウォーレン
製作総指揮:スチュアート・オルソン『プー あくまのくまさん』
脚本:ハリー・ボックスリー
編集:ジャック・ジェームズ
音楽:ジェームズ・コックス
出演:ケリー・ライアン・サンソン、クリッシー・ウンナ、ダニエル・スコット、ローレン・バッド
2024年/イギリス・アメリカ/82分/英語/カラー/デジタル5.1ch/スコープサイズ/原題:Cinderella’s Curse 字幕監修:人間食べ食べカエル
配給:ハーク、S・D・P/R15