『対外秘』映画レビュー 先頭を走る韓国サスペンスに酔いしれる

心臓を波打たせ、ゾクゾクさせるサスペンスだったら、韓国映画はトップを走っている。『対外秘』は、中でも一級品だ。時は1995年。盧泰愚(ノテウ)大統領時代。釜山開発と議員選挙とシークレット文書が題材。それだけ見ると、ちょっと難しそうに思えるかもしれないが、とんでもない、韓国サスペンスは侮れない。

伏線と回収が次々と波のように押し寄せ、情勢が刻々と変わっていく。最近の作品だったら『ソウルの春』を思わせる。あなたが『ソウルの春』に熱狂したのなら、『対外秘』にもきっと満足するだろう。

ヘウン(チョ・ジヌン )は、議員へ立候補している。今までの下積みの功績が認められ、与党公認候補にまで上り詰めた。地元釜山のため住民のため、力を尽くす覚悟でいた。妻と子供に今までさんざん苦労をかけてきた。やっと報いることができる。

ところが、打ちのめされそうな出来事が起こる。選挙直前に公認を外されてしまった。なぜ? その後が彼の本領発揮だ。あきらめない。頭を使う。戦い抜く強い気持ちが後光のように輝く。人を集め、金を集め、秘策を練る。その過程のスリルは熱気がある。

『悪人伝』」のイ・ウォンテ監督監督がメガホンをとっている。出てくるキャラクターが、クリアで重みがあり忘れがたい。

主人公のヘウンは、丸顔で人当たりがいい。彼ののほほんとした平和な姿がいつしか凄みを帯びていく。彼が先生と呼ぶ、政治フィクサー、スンテを演じるのは、『ソウルの春』などの演技派イ・ソンミン。何があっても動じない胆力を剛腕で演じ切っている。

私の一押しは、ギャングのピルドを演じるキム・ムヨルだ。『犯罪都市 PUNISHMENT』のヴィランで唯一無二の個性が輝いていた。『対外秘』では、物腰の柔らかさと危険な香りが同時に漂う。感覚としては、昔の日本ヤクザ映画に出てきそうなタイプ。雰囲気からして高倉健と同じ路線だ。

ダーティワーク満載の世界か花開く。最後には、高笑いが聞こえる。いったい誰の笑いだろうか

(オライカート昌子)

対外秘
11月15日(金)シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷 他全国公開
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2023 | 韓国 | 韓国語 | 116分 | カラー | スコープ |
原題:대외비(英題:THE DEVIL’S DEAL)| 5.1ch | 字幕翻
訳:鷹野文子 | 提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
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