見たのは何度目だろうか。
今もまた、「グッド・タイム」(2017年)に続き、
「アンカット・ダイヤモンド」(2019年)を見たばかり。
前者ではクズ男に扮したロバート・パティンソンが走る、逃げる。
後者では山師アダム・サンドラーが息を切らして逃げ回る。

ともにニューヨークのユダヤ人、ジョシュ・サフディの作品だ。
サフディが描く主人公は総じて打算的でいい加減なオトコばかり。
新作『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』はどうだろう。
主人公を演じるのは今や飛ぶ鳥落とすティモシー・シャラメ!
シャラメ扮するはアメリカのプロ卓球プレイヤーだが、やはり、
オンナにだらし無く、人生設計もいい加減で、コトあるごとに逃げ回っている。
息切らすほどの疾走感。
もはやそれがサフディ監督の使命のようだ。

物語の舞台は1950年代のニューヨーク。
世界チャンピオンを夢見る卓球プレイヤー・マーティは、
親戚の靴屋で働きながら世界選手権に参加するための資金を稼いでいる。
ロンドンで行われた世界選手権で日本の選手に敗れたマーティは、
次回日本で行われる世界選手権へ参加し、彼を破って世界一になるために、
口八丁手八丁、ありとあらゆる方法で資金を稼ごうと奔走する。
汗臭いランニングシャツにちょび髭のマーティ(シャラメ)は
みすぼらしく映るが、そんなオトコをオンナは放っておけないらしい。
愛くるしく人間味にあふれた嘘つきをシャラメがここぞと熱演する。

マーティの最高のライバルとなる日本人選手エンドウ役には、
東京2025 デフリンピック卓球日本代表の川口功氏が出演。
そんな演技経験の無い川口功にも注目したい。
だから、クライマックスで見せる手に汗握る卓球シーンは
本作のひとつの見せ場でもある。
その会場が上野に現存する「恩賜公園野外ステージ」に気づき驚いた!
不忍池の横にある水上音楽堂で週末ともなるとアイドル系のイベントで
カメラ片手のオヤジたちで賑わう聖地でもある。

ここでの1950年代ふう美術が素晴らしい!
サフディ監督作品のクリエイティブ・チームに今回、初参加したのは
ベテラン美術監督のジャック・フィスク、80才。
テレンス・マリック、ブライアン・デ・パルマ、デヴィッド・リンチ、
ポール・トーマス・アンダーソン、マーティン・スコセッシなどの
映画セットを60年近くデザインした名匠だ。
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』、『レヴェナント:蘇りし者』、
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』の3作品でアカデミー賞美術賞に
ノミネートもされた。
本作での仕事は特注の防音スタジオのセット作りと
ニューヨーク周辺の外観に分かれたが、伝説の男、フィスクは
ロウアー・イースト・サイドの安アパートや店から5番街の豪邸、
特定の時代の場所まで、ボウリング場、卓球場、ガソリンスタンド、
郊外の農場、ブロードウェイの劇場、ロンドンのホテル、
さらにウェンブリー・アリーナまでも含め、いくつもの世界に命を吹き込んだ。
『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』の見所はシャラメの名演、
そしてジャック・フィスクの美術と言っても過言では無い。
『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』
3月13日(金)TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー
監督・脚本:ジョシュ・サフディ
出演:ティモシー・シャラメ、グウィネス・パルトロウ、
オデッサ・アザイオン、ケビン・オレアリー、タイラー・オコンマ
2025年/アメリカ/英語/149分
原題:Marty Supreme
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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