『ロスト・フライト』映画レビュー あり得るリアルな設定と止まらないアドレナリン

ジェラルド・バトラーに目が釘付けだ。これぞスターの力だろうか。彼が演じるのは、スーパーヒーローではない。仕事人、お父さんなど、我々とそれほど変わりない等身大の人物だ。そして最後には勝つ。ジェラルド・バトラー映画の魅力的なところだ。

勝つ理由はどこにあるのか。それをはっきり描いているのが、『ロスト・フライト』だ。

『ロスト・フライト』でジェラルド・バトラーが演じるのは、ベテランパイロットのトランス機長。大晦日まで働いている。一人娘はアメリカの大学へ行っていて、ハワイの叔母の家で休暇を楽しんでいる。妻とは死別。シンガポールをベースにして、日々乗客の安全を守るために飛行機を飛ばす。

その日のフライトには、懸念材料が二つあった。一つは、移送中の犯罪者・ガスパール(マイク・コルター)の搭乗が告げられたこと。離陸直前のことだった。二つ目は、極度な悪天候の中を飛ばなくてはならないことだ。

嵐雲の上空を飛ぶつもりだったが、トレイルブレイザー119便の古い機体は、嵐と落雷に直撃されてしまう。さらに、次から次へと苦難と危機に見舞われる。はたしてトランスは乗客を守れるのか、自分も無事に娘と新年を祝うという目標を達成できるのか。

彼は生涯で、まさか自分が発するとは思わなかったことを言わなくてはならなかった。「乗客に、衝撃に備えるように伝えてくれ」と。

次から次へと危機が襲い掛かるノンストップスリル映画は、最後までエネルギーを持ち続け、見る側のアドレナリンを消費させる。その危険ひとつひとつに、冷静かつワイルドに対処し、乗り越えていくのが、ジェラルド・バトラーだ。

できることと、やるべきことひとつひとつに真摯に向き合っていく仕事人としてのトランス機長のそんな姿は、共感を呼ぶ。実にに頼もしい。ここに、ジェラルド・バトラーが演じるキャラクターが、スーパーヒーロー以上に活躍してしまう秘密がある。

『ロスト・フライト』のストーリーはシンプルだが、リサーチを駆使した、あり得る設定がポイント。強いリアリティで引きが強い。戦慄度満載の航空パニックに脱出サバイバルという二つのパートを自然に見せてくれる監督は、『アサルト13』『ブラッド・ファーザー』のジャン・フランソワ・リシェ。元になっているのは、元MI6のスパイ小説家、チャールズ・カミングの脚本。元ネービーシールズが出演しているところにも注目。

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(オライカート昌子)

ロスト・フライト
11月23日木曜全国公開
配給:ポニーキャニオンクレジット
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監督:ジャン・フランソワ・リシェ『アサルト13』『ブラッド・ファーザー』脚本:チャールズ・カミング出演:ジェラルド・バトラーマイク・コルタートニー・ゴールドウィン配給:ポニーキャニオン原題PLANE/2022年/シネスコ/ドルビーデジタル5.1ch/107分© 2022 Plane Film Holdings, LLC. All Rights Reserved.公式HP:https://lostflight.jp公式X:映画『ロスト・フライト』https://twitter.com/lostflightmovie@lostflightmovie