『炎のデス・ポリス』映画レビュー

重過ぎない、深刻過ぎない、遊び心もプラスされた、スタイリッシュな、シンプルアクション映画が見たい時がある。『炎のデス・ポリス』は、まさしくそういう映画だ。ジョー・カーナハン監督作品には、娯楽に徹した銃撃アクション映画が多い。

『スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい(2007)』で、ハイテンションな銃撃戦で度肝を抜き、『特攻野郎Aチーム THE MOVIE(2010)』も好評を博した。

オヤジ大活躍映画も多い。『特攻野郎Aチーム THE MOVIE(2010)』、『THE GREY 凍える太陽』は、リーアム・ニーソン、脚本を手がけた『デス・ウイッシュ』は、ブルース・ウィリス、『炎のデス・ポリス』では、『コンティニュー(2021)』主役をつとめたフランク・グリロとともに、『炎のデス・ポリス』では、満を持してジェラルド・バトラーが登場。凄腕暗殺者役だ。この起用にはしびれた。

砂漠の小さな警察署が、生きるか死ぬかの舞台だ。ヴァレリー(アレクシス・ラウダー)は若手の女性警官。彼女を殴った罪で、正体不明の男、テディ(フランク・グリロ)が連行される。そして、彼を狙って、暗殺者がやってくる。

それにしても、ジェラルド・バトラーは、主演にしてはかなり登場が遅い。いつかな? いつかな? と、こちらがしびれを切らしたころに、不意にスクリーンの正面に素顔をさらけ出す。その瞬間のカッコ良さは最高レベルだ。

彼と対峙するテディと、その中央に若いけれど芯が強く誠実なヴァレリーがいる。その三つ巴の構図に、サイコな暗殺者、別の言い方をすれば、どこにでもいそうな、オヤジの中のオヤジ、ラム(トビー・ハス)が強烈な個性で割り込んでくる。

平和と日常の象徴のはずの警察署が、徐々に死体と炎に内部浸食されていく過程の爽快感は、ラストのドライブでさらに盛り上がる。

ヴァレリーの活躍で見せるガールアクション要素は新機軸として印象深いけれど、『炎のデス・ポリス』は、ジョー・カーナハン監督作品らしい、オヤジ礼賛映画の極めつけでもあるのだ。

ところで、ジェラルド・バトラーは、作品数も人気映画も多いけれど、これほど魅力を見せてくれた作品は、出世のきっかけとなった『タイムライン(2003)』で演じた中世の王以来だ。

(オライカート昌子)

炎のデス・ポリス
7月15日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷他にて全国公開
配給:キノフィルムズ
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監督:ジョー・カーナハン 『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』『スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい』『コンティニュー』
脚本:クルト・マクラウド、ジョー・カーナハン

出演:ジェラルド・バトラー 『ジオストーム』『300』『エンド・オブ・ホワイトハウス』、
フランク・グリロ 『アベンジャーズ/エンドゲーム』、
アレクシス・ラウダー 『ハリエット』、
トビー・ハス 『ハロウィン』
【原題:COPSHOP/2021年/アメリカ/英語/107分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/日本語字幕:橋本裕充/PG12】