非常に面白い。特に、5歳のときに「人はいつか死ぬと死って愕然とした」と語る彼が生涯持ち続けることになる、独特の人生観・死生観が興味深い。どの映画にも、そんな彼の思想が露骨に反映されている。自ら脚本を書く監督ならではの分身のような作品たちは、驚異的なスピードで書き上げられ、年に1本という高速ペースで生まれていく。「アイディアなら無限にある」(これもスゴイ発言)という膨大なメモは、破り取られたノートの切れ端やホテルの便箋など、様々な大きさと形で保存されている。暇があればそれらを読み返し、作品にするべく肉付けしていくのだという。出来上がった編集も自分で行い、「観客が耐えられる時間は限られている」と、長時間の映画は作らない。映画祭やアカデミー賞などには興味なし。「映画は”どう感じるか”で答えなどない。陸上競技とは違う」のだと。根っからの職人気質で本物の映画人。こういう人を天才と呼ぶのだろう。
個人的には、70~80年代のアレン映画は本人の「神経衰弱」演技が苦手であまり観ていない。が、90年代以降、彼があまり出なくなってからは素直に楽しめるようになった。作品が変化するごとにファン層が変わったかもしれないが、それもアレン映画の魅力の一つ。これからも精力的に作り続けて欲しい。 (池辺 麻子)
映画と恋とウディ・アレン
2012年11月10日(土)よりTOHOシネマズ シャンテ にて全国ロードショー
オフィシャルサイト http://www.woody-documentary.jp/