ふがいない僕は空を見たの画像
©2012「ふがいない僕は空を見た」製作委員会
生きることの喜びと痛みを日常の風景に挟み込まれる驚きのシーンとともに紡ぎだす

映画『ふがいない僕は空を見た』は、山本周五郎賞、-18文学賞をダブル受賞した窪 美澄の連作短編集の映画化作品。『百万円と苦虫女』などのタナダユキ監督が手がけている。互いに関連のある4人の主人公が、4つのパートで描かれている。

まず、冒頭の場面に驚かされる。暗い中、かすかに聞こえるドアの開閉音。続いて繰り広げられるのが、コスプレ主婦と高校生男子の間で行われる愛の営みだ。しかも長くて露骨。

これはどういう映画なのだろう? と、戸惑うかもしれない。なぜコスプレ? なぜアニメ主人公の名前で呼び合う? そんな風に観客を驚かせ、揺さぶるようなシーンは、他にもある。そしてとても効果的だ。

例えば、弁当を捨てる場面。あんずの義母が豹変する場面など。映画は日常的な世界を丹念に描きながら、ところどころでショックを与え、登場人物が抱く痛みを浮かび上がらせる。

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©2012「ふがいない僕は空を見た」製作委員会
4人の主人公が織り成す現実の世界は、悲しくて苦しい。ここで描かれるのは、不妊、いじめ、嫁姑問題、認知症、格差社会など。

同時に、この世界に存在する限りない美しさと豊かさと生命力の描写が徐々に現れてくる。生きることの痛みの中から次第に現れてくる活力に満ちた世界のありさまはダイナミックで力強い。

高校生の主人公卓巳と主婦あんずのストーリーがメインなのだが、そこに挟まれた卓巳の友人でコンビニで働く福田の話は、特に秀逸。やるせなさと共に静かな余韻を残す。
                            (オライカート昌子)

ふがいない僕は空を見た
R18+
11月17日(土)テアトル新宿他全国ロードショー 
ふがいない僕は空を見た 公式サイト http://www.fugainaiboku.com/