『スペルマゲドン 精なる大冒険』解説
『スペルマゲドン 精なる大冒険』とは

前代未聞の精子の生き残りレースを描いた『スペルマゲドン 精なる大冒険』は、シッチェス・カタロニア国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭などに正式出品。アニメーションの頂点「2024年アヌシー国際アニメーション映画祭」でも、その新鮮で大胆なコンセプトで世界中をザワつかせた。
本国ノルウェーでは大規模公開。『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』、『ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今』を抑え、2週連続で堂々の第1位の大ヒットを記録した。台湾や香港でも公開直後から10代を中心に熱狂的な反響が広がり、連日満席回をたたき出す社会現象となった。
『スペルマゲドン 精なる大冒険』監督

トミー・ウィルコラ監督はノルウェー生まれの脚本家、映画監督。
処女作である、クエンティン・タランティーノの『キル・ビル』のパロディー『キル・ブル~最強おバカ伝説~』(2007)が思わぬ大ヒットとなり、続くのナチスのゾンビを描いたブラッディーホラー『処刑山 -デッド・スノウ-』(2009)はカルト映画として国際的に称賛された。
ラスムス・A・シーヴァートセン監督はノルウェーを代表するアニメーション監督。
数多くの長編映画、TVシリーズ、CMを手掛け、その多くで国内外の賞を受賞している。中でも興行的に大成功を収めたストップモーションアニメ『ピンチクリフのクリスマス』(2013)は、人気シリーズとなり第3作目まで続編が製作されている。
『スペルマゲドン 精なる大冒険』映画レビュー あとに引く大冒険

『スペルマゲドン 精なる大冒険』を見て改めて知ったことは数多い。楽しいミュージカルに多少のシニカルコメディスパイスをまぶし、教育的価値も光る。最初に描かれるのは、スペルマたちの運命。このパートは、線画アニメ。本編はCGアニメだ。天国の言い方のバリエーションが紹介されたり、愛の行為の言い換えことばがでてきたり、その点だけでも語彙が増え知識欲が刺激された喜びがある。
『スペルマゲドン 精なる大冒険』のストーリーは『インサイド・ヘッド』シリーズのように、同時進行の二本立て。一つは、精巣の中でのスペルマたちの生活だ。スペルマゲドンが起こる日を待ち望みながら、日々勉学にいそしんでいる、10億分の一の生き残りがかかっているわけだが、ちょっぴり頼りない精子・シメンと、勝気でまっすぐなカミラの生活はごく普通で退屈もある。もう一つのストーリーは、その精巣の持ち主、思春期まっただ中の10代の少年・イェンスが主人公。女の子も含んだ友人たちとの郊外での休日に何が起こるのか。わくわくが止まらない。

とうとうその日がやってきそうな気配で、空気感は一変する。スペルマゲドン緊急放送が流れ、「これは訓練ではありません」というアナウンスが何度も流れ、特別感を演出。ミュージカルシーンで描かれる爆発的祝祭感は楽しさ満載だ。
スペルマたちは、右往左往しながら極楽を意味する卵子に向かって流れ込む。だがその道は当然ながら険しく厳しい。邪魔するものもいれば、環境の脅威もある。冒険さながらの危険な旅は想像を絶する。10億分の一の可能性に輝く者はいるのだろうか。
『スペルマゲドン 精なる大冒険』は、身体の仕組みや作りを視覚化しているところも価値が高いが、もう二度と今までのように「愛の行為」を見ることができない恐れもある。スペルマたちの擬人化の影響は忘れがたい。
性教育先進国の北欧発のアニメーションだと思うと、性教育映画かなと思うこともあるけれど、教育目的としては娯楽色も強い。最後にとってつけたようなミュージカルシーンは、どっちつかずのバランスをとる重石の役割があるのかもしれない。
スペルマゲドン 精なる大冒険
2024©74 ENTERTAINMENT AS
2026年2月13日(金)より、新宿ピカデリーほか全国公開
配給:シンカ
監督:トミー・ウィルコラ、ラスムス・A・シーヴァートセン
2024年/ノルウェー/ノルウェー語/80分/カラー/2.39:1/5.1ch/PG12
原題:SPERMAGEDDON 後援:ノルウェー大使館 配給:シンカ





