『フォーエバー・パージ』映画レビュー

『パージ』シリーズのパージ法では、一年のうちの12時間、ほとんどの犯罪が許される。その間、人々は極限状態に置かれ、人間の底知れなさが暴きだされる。容赦ない非道な面があからさまになる。反面、理解や、心に閉まられていた宝石の輝きも息を吹き返す。

『パージ』シリーズの5作目、『フォーエバー・パージ』は、パージの12時間という縛りが守られなくなってしまった状況下で繰り広げられていく。設定の広がりは、単純なホラー/サスペンスからの脱皮を可能にした。広大な人間性の信念すら見せてくれる快作だ。

主人公は不法移民としてアメリカに越境してきた夫婦と、夫が働いている牧場主の家族。メキシコ人とアメリカ人、人種の違う二組は当初は反発しあう。だが、逃亡と闘いを通して、理解と協力が芽生えてくるところは、バディものの精神が垣間見れる。

『フォーエバー・パージ』は、ホラーサスペンスの要素をベースとして、様々なジャンルの映画のエッセンスが集められている。逃亡もの、バディもの、国境越え、ウェスタン、コンバット、サバイバル、タイムリミット要素など。2時間弱の中でこれだけの要素が凝縮されているのに、極めてスムーズでワクワクさせてくれるのは、よっぽどメキシコ人監督の腕が効いているのではと思う。

個人的に楽しかったのは、バラの絵柄を手がかりに、アメリカエルパソの街を潜り抜けていくシーン。また、最後の方のシーンで、二人が投げ縄を肩に下げるところから、その投げ縄技がいつ登場するのかと期待させてくれるところ。もちろん投げ縄シーンは、お約束のかなり美味しい場面で使われていた。

(オライカート昌子)

フォーエバーパージ
(C)2021 UNIVERSAL STUDIOS
2021年製作/103分/R15+/アメリカ
原題:The Forever Purge
配給:パルコ