『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』映画レビュー(感想)

ちょっと前までは、いわゆるゲイムービーには、文字通り「お気楽」「しあわせ」「明るく楽しく」「いい気分」「目立ちたい」(ゲイにはそういう意味もある)な娯楽もプラスしたコメディ映画や音楽映画があった。代表的なのは、『プリシア』、『3人のエンジェル』など。

性的少数者で差別の標的にされがちなので、その現実を生きていく厳しさや諦めもあるけれど、それを乗り越え自分なりに生を謳歌する喜びが伝わってきた。もちろん、シリアスで映画性が高い作品もそれ以上に目立っていたけれど。

それがLGBTというカテゴリーができて以降、お気楽さが減ってシリアスに傾いた映画が増えてきた印象がある。少し物足りなかった。楽しい映画が見たい、心を揺さぶられたいって気持ちがあった。

そして出会ったのが、2019年のフランスの大ヒットスポーツコメディ映画、『シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち』だ。LGBITオリンピックに挑む水球チームが主人公だ。

この映画には見たかった要素が山とある。楽しい上に、現実を見据えた部分、笑えるパート、温かさと余裕。フランス映画の底力だ。

中心人物の一人は、元競泳オリンピック銀メダルの選手、マチアス。同性愛者のインタビュアーに暴言を吐いたため、ゲイの水球チームのコーチを引き受けなくてはならなくなる。この仕事は彼の現役復帰のための条件なのだ。水球チーム(シャイニー・シュリンプス)は、誰もまじめに練習をしているようには見えない。

お気楽で騒いでばかりいるシャイニー・シュリンプスのメンバーだったが、実は彼らも、悩みや問題を抱えていた。それにとらわれることなく、人生の喜びのために、仲間のためにLGBTオリンピックのための出場権を獲得するために戦っていく。

フランス人は意地が悪いのか、どうなのか、絶体絶命の危機が何度も押し寄せる。マチアスのコーチも厳しさを増していく。水球で勝ち残っていくのに必要な「集中力、持久力、強靭さ、正確さ)を身に付けるために、全力を尽くす。

出場権を獲得し、大会が開かれるクロアチアに行く道中は、まるで楽しいロードムービーだ。人生を彩る苦しみや悲しさがあっても、仲間と心を合わせて楽しさと好きなことを追及していく、その分厚い心が、元気の灯を灯してくれる。特に、ずっと仏頂面だったマチアスが、ついに笑顔になる瞬間が楽し過ぎる。

オライカート昌子

シャイニー・シュリンプス!愉快で愛しい仲間たち
7 ⽉9⽇(⾦)、ヒューマントラストシネマ有楽町、
新宿武蔵野館、Bunkamura ル・シネマ ほか 全国公開︕!

監督・脚本︓セドリック・ル・ギャロ、マキシム・ゴヴァール
出演︓ニコラ・ゴブ、アルバン・ルノワール、ミカエル・アビブル、デイヴィット・バイオット、ロマン・ランクリー、
ローランド・メノウ、ジェフリー・クエット、ロマン・ブロー、フェリックス・マルティネス
配給︓ポニーキャニオン、フラッグ 提供︓フラッグ、ポニーキャニオン
原題︓Les Crevettes Pailletees 英題︓The Shiny Shrimps
2019/フランス/カラー/103 分/ビスタ/DCP/5.1ch/字幕翻訳︓⾼部義之 【PG-12】
© LES IMPRODUCTIBLES, KALY PRODUCTIONS et CHARADES PRODUCTIONS
公式サイト︓shinyshrimps.jp 公式 Twitter︓@shinyshrimp