『コヴェナント/約束の救出』映画レビュー ガイ・リッチー印の上位互換 スリルと美学とスタイルに注目

アクションやエンタメ作品で、スタイリッシュ人気作品を生み出すガイ・リッチー監督が、初めて手掛けた社会派ドラマが、『コヴェナント/約束の救出』だ。アフガニスタンの紛争地域を舞台に、命がけで誓約を守る。ちなみに、コヴェナントという単語は、『誓約』を意味する。

主人公は、アフガニスタンの米軍基地で、タリバンの武器や爆弾の隠し場所を探す部隊を率いる、米軍曹長ジョン・キンリー(ジェイク・ギレンホール)。彼が誓いを守ろうとする相手は、アフガニスタン人で、彼の部隊の通訳をつとめるアーメッド(ダール・サリム)。

なぜ、誓約を守るのか。それは、命を助けられたからだ。命を助けられたキンリーは、その後、キンリーを助けたために窮地に陥ったアーメッドを、助けようとする。命には命を。それが、キンリーがやらなければならないことだ。

『コヴェナント/約束の救出』が、普通の戦争アクションと違うところは多い。まず、音楽が違う。普通だったらストーリーを邪魔しない程度の勇ましい音楽が使われるが、もっとアートな音色だ。

アーメッドのバトルスタイルが、違う。冷静で、無情。スタイリッシュなプロの殺し屋のように、落ち着いていて、動きに無駄がない。彼は通訳に過ぎないけれど、彼のバックグラウンドが、にじみでていて、生活態度や精神の突き抜けた強さが見える。今までの作品で、多数の殺し屋を描いてきたガイ・リッチー監督の美学とスタイルが、アーメッドに息づいている。

戦争映画では、人が亡くなる頻度が高いけれど、『コヴェナント/約束の救出』ほど、多数の人が亡くなって、その重さを感じられるのも珍しい。

さらに、通常の戦争映画より、アフガニスタンという土地の臨場感が強い。次から次へと襲い掛かるスリルは半端ない、観客は、自分が紛争地帯にいるような感覚を刻み付けられるだろう。ストーリーによるところも大きいが、この感覚は格別だ。

気になるのは、原題。『Guy Ritchie’s the Covenant(ガイ・リッチーのコヴェナント)』つまり、監督の名前が、題名に入っていること。

フェリーニやバスター・キートンのころならともかく、最近ではあまり聞かないスタイルだ。『コヴェナント/約束の救出』は、一見シリアスでもあるし、戦争エリアを描いた映画だが、ガイ・リッチー監督印です、お忘れなくという、念押しをしている。それだけ、ガイ・リッチー監督にファンが多く、期待感が高いということなのだろう。それは私にも当てはまる。ガイ・リッチー監督の作品なら必ず見たいと思っているから。

”ガイ・リッチーのコヴェナント”と、念押しするほどの印は、しっかりあって、この映画の価値を高めている。しかも、いつものスタイルの上位変換だ。戦争アクションの痛快さやスリルは、保ちつつ、社会派ヒューマン系の重みもある。感動も深い。

(オライカート昌子)

コヴェナント/約束の救出
2 月 23 日(金・祝)TOHO シネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
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監督・脚本・製作:ガイ・リッチー
出演:ジェイク・ギレンホール、ダール・サリム