『紙の月』映画レビュー

(C)「紙の月」製作委員会
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第27回 東京国際映画祭コンペティションで最優秀女優賞(観客賞も)を受賞した宮沢りえが、七年振りの映画主演とは思えない鬼気迫る迫力・技量で銀行員横領犯を演じる心を揺るがす衝撃のヒューマンサスペンス!

女性行員の横領事件は、1973年10月21日、滋賀銀行山科支店のベテラン行員・奥村彰子(当時42歳)が横領の容疑で逮捕。奥村は同年2月までの6年間で、およそ1300回にわたって史上空前の9億円の金を着服、ほとんどを10歳年下の元タクシー運転手・山県元次(当時32歳)に貢いでいたという実話がありましたが、本作はどうもこの事件から想を得たと思ったのは私だけではないでしょう。

さて、映画(原作有)の舞台はバブル崩壊後の‘1994年’。
バブル崩壊の理由(内閣府より)=1991年3月~1993年10月の間、大蔵省より土地関連融資の総量規制、日銀の金融引き締め、公定歩合の引き上げがほぼ同時期に敢行され、地価・住宅価格の大幅下落そして不良債権の拡大!このあたりはテレビドラマ「半沢直樹」でもうまく描かれていました。また、この時代は社内ランなどコンピュータ管理も脆弱でしたし携帯電話も一般的に普及されておらず、悪いことを考えれば簡単に業務上横領が出来てしまう社会でもありました。人のモラルが最重要だった時代だったとも言えます。

あらすじです。夫と二人暮らしの主婦・梨花(宮沢りえ)は銀行の契約社員として営業・外回りの仕事をしています。細やかな気配りや丁寧な接客で顧客からも上司からも信頼もあつく何不自由のない生活に見えますが、仕事人間の夫(田辺誠一)は優しいのだけれど、特に子供を欲しいとも考えていません。また、ブランド志向・上昇志向は強いものの妻への関心は希薄なのです。
ある日から、梨花は年下の大学生・光太(池松荘亮)と逢瀬をつづけるようになります。バブル期を知っている二人は豪華ホテルでの滞在や高級レストランでの食事など湯水のように散財しますが、その原資はすべて梨花が横領したお金なのでした……。

監督は『桐島、部活やめるってよ』でメガホンを取った吉田大八監督が、直木賞作家・角田光代の長編小説「紙の月」を映画化。原作は事件発覚後のエスケープ物に近いのですが、映画の方は………さて、どうなるのでしょうか? 以下ネタバレになってしまうので是非劇場でご覧くださいませ。(中野 豊)

紙の月
■2014年日本映画/上映時間:126分/監督:吉田大八/出演:宮沢りえ、池松荘亮、小林聡美、大島優子、田辺誠一、近藤芳正、石橋蓮司 ほか

オフィャルサイト:http://www.kaminotsuki.jp/

『紙の月』映画レビュー その2