
『Flow』解説・あらすじ
『Flow』解説
映画『Flow』とは
ラトビア出身のギンツ・ジルバロディス監督が5年かけて完成させた長編アニメーション。
『Flow』は、第97回アカデミー賞国際長編賞と長編アニメーションにダブルノミネートされ、長編アニメーション賞を受賞した。両賞にダブルノミネートされたことがある作品は、史上初。ラトビア映画としては、アカデミー賞ノミネート、受賞とも初となる。
大スタジオでは数百人のスタッフ、数百億円の予算をかけて作られるアニメーションが、『Flow』はオープンソースのBlenderで制作、スタッフは50人以下、予算も約5.5億円。その常識破りの革新性が驚きを持って受け止められた。
ギンツ・ジルバロディス監督とは
『Flow』では監督・脚本・音楽を担当。1994年ラトビア生まれの映像作家・アニメーター。前作の『Away』は、3年半かけて一人で作り上げた。
映画作りは、高校時代の美術専攻を除けば、ほぼ独学。YOUTUBUのチュートリアルを見て、短編を作りながら学んだという。
アニメーションの監督で好きなのは、宮崎駿監督。実写映画の監督ではアルフォンソ・キュアロン監督。
映画『Flow』あらすじ
のんびりと自由に生活していた猫は、ある日鹿の大群が走ってくるのを目撃する。何が起きているのかわからなかったが、次の日、寝床にしていた屋敷が水浸しになってしまう。なんとか濡れないように高いところに逃げたが、水が迫ってきた。
その時、ボートを目撃、何とかしてそこに逃げ込んだ。ボートにはカピバラが乗っていた。その後、流れに沿って旅をする中で、仲間が少しづつ集まり始めた。最初は知らない者同士だったが、それぞれが成長の旅となる。果たして旅の最期に何が起きるのか。
『Flow』映画レビュー 壮大な旅に酔いしれる
映画に会話がなくてもかまわない。それを証明したのが『ロボット・ドリームス』だ。『Flow』にも会話はない。映画に必要なのは、映像体験。感情はどれだけ動かされるのか。
『ロボット・ドリームス』と『Flow』は、共にアニメーション。素晴らしい体験をもたらしてくれるという共通点はあるものの、違いも大きい。『ロボット・ドリームス』では犬が擬人化されていて、ニューヨークに住んでいる。『Flow』に出てくる動物たちの擬人化は最小限。猫はどこまでも猫であり犬は犬。そこが映画の一番の愛らしい点だ。
わたしたちの知っている猫が、壮大な旅をする。ひとりぼっちだった猫に仲間ができる。今まで怖くてできなかったことが少しずつできるようになっていく。何という大きな変化だろう。
変化の旅はスムースでどこまでも自然。独特の見せ方が特に印象的だ。CGアニメーションはなんでもできる。どのようにも描ける。その自在性を最大限に生かしている。
過去の映像作品からの引用やイメージのふくらませ方が豊かだ。遺跡や古い彫像などを見ていると、『ロード・オブ・ザ・リング』の壮大な旅を思わせる。そして、猫は、『魔女の宅急便』のジジにも見えてくる、そういえば、アニメーション作家として影響を受けたという宮崎駿監督の影響は、音楽にも感じられた。『Flow』は、過去の映画の遺産の恩恵をたっぷりと受けて、大切に作られた作品なのだ。
Flow
©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.
3月14日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
配給:ファインフィルムズ
監督・脚本・音楽:ギンツ・ジルバロディス 音楽:リハルズ・ザリュペ 2024/ラトビア、フランス、ベルギー/カラー/85分
配給:ファインフィルムズ 原題:Flow 映倫:G 後援:駐日ラトビア共和国大使館
©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five. 【公式サイト】 https://flow-movie.com/