アウトレイジ ビヨンドは、今の日本映画を背負って立つ一人北野武監督の記念すべき16作目。2010年に公開された『アウトレイジ』の続編であり、北野監督作品としても初の続編でもある。
アウトレイジの意味は、激怒や乱暴、狼藉、極悪非道とも訳される。映画は、極道や警察が入り乱れ、繰り広げられるバイオレンスの百花繚乱。
だけど、そこは北野監督、描き方が一本筋が通っていて、くっきりと小気味良く、ぼやけたところがひとつもない。その独特で静謐な印象は、むしろ映画を見終わってしばらくしてから効いてくるだろう。
廃れてしまった感のある日本の極道映画を、モダンなテイストで蘇らせているようでもある。邦画自体を生まれ変わらせたいという意欲もあるのかもしれない。出演している俳優たちも、その意欲を汲み取った如く、他では見られないほどの集中力で演じきっているのがわかる。
例えば、くたびれているけれど、矜持だけは持っている山王会の古参幹部を演じる中尾彬。バラエティでは決して見ることができない俳優の誇りが伝わってくる。北野監督は、俳優自身も持っていることを知らない、俳優の中身を鋭いメスで取り出し、場面に映し出す力を持っているのだろうか。
端役ですら、出演者一人ひとりのイメージが瑞々しい。懸命に演じているのが伝わってくる。だからこれだけの出演者を集めることができたのだろう。まだまだ俺達の力はこんなもんじゃないという雄叫び声が聞こえてくるようだ。
アウトレイジ ビヨンドのバイオレンスが効いた内容は、必ずしも万人向けではないかもしれないが、本質をえぐりだす北野監督の腕さばきを多いに楽しめる人は多いと思う。
(オライカート 昌子)
アウトレイジ ビヨンド
2012/10/6(土)より新宿バルト9&新宿ピカデリーほか全国公開!
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/outrage2/
ⓒ2012「アウトレイジ ビヨンド」製作委員会