主人公のダイキチは、自ら望んでそういう立場に身をおくわけだし、いやいや押し付けられたわけでもない。しかし、現実はそう甘くはない。最近は子育てを聖職のように囃し立てるが、仕事を持つ者は男であれ女であれ、子育てのためにたくさんのことを犠牲にしなくてはならないのは相変わらずだ。
映画は、子育ての楽しさよりそっちのほうを強調するようにして進んでいく。かといえ、子育ての楽しさは千差万別だろうけれど、現実の大変さは誰もが日ごろ感じることだから、アプローチの仕方としては正しいのだろう。
ダイキチは次第に”父性”に目覚めていくが、それもありきたりの父性とは違う。自分の子供ではない分、もっと相手をしっかり見て、もっと大切にしなくてはという気負いも見える。この映画は、子供との関係というよりは、もっと幅広く、他者とのかかわり全般について描かれた映画なのだろうと思う。(オライカート昌子)
うさぎドロップ
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