© 田中慎弥 / 集英社・2012『共喰い』製作委員会
© 田中慎弥 / 集英社・2012『共喰い』製作委員会
 昭和の最後の年、 山口県下関市 の「川辺」という、どこにでもありそうな田舎町を舞台に、ドメステックバイオレンスによって崩壊していく家族を主軸に描いたレトロホラー映画。

 監督は『EUREKA ユリイカ』の青山真治。原作は芥川賞作家の田中慎弥。脚本は『Wの悲劇』の荒井晴彦というドリームチームによって創り上げた文学的なテイストで心の闇に迫ります。

17歳の少年 遠馬は父と愛人と暮らしていますが、父は「セックスの時に女を殴る」性癖を持ち、生みの母は遠馬が生まれてすぐ家から出て行ったのです。母は左手を戦火で焼かれ義手をつけています。

 遠馬は幼馴染みの彼女 千種がおり何度も性交渉を続けるうちに、自分にも父の血(暴力的な性癖)が流れていると悟るようになるのです。

宿命に囚われた父と息子に対する母と千種、そして父の愛人 琴子の女のしたたかさが男の女々しさとは裏腹に男前な生き様が現在平成の女性たちをみるようです。

キャストでは田中祐子演ずる母親抜群の存在感で、戦争で失った片腕、ぼさぼさの髪型で魚をさばく姿。そして言います「あの人が戦争を」「あの人が」……。

反戦映画でもあるのです。 (中野豊)

共食い
9/7(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー!
公式サイト:http://www.tomogui-movie.jp/