『侍タイムスリッパー』山口馬木也さんインタビューの5回目(最終回)は、山口さんの芝居に対する考え方、俳優業、今の若者の話題などについてお聞きしました。
山口馬木也さんインタビュー その1
山口馬木也さんインタビュー その2
山口馬木也さんインタビュー その3
山口馬木也さんインタビュー その4
『侍タイムスリッパー』主演 山口馬木也さんインタビュー
僕を作っているのは相手
━━この作品を通して、お芝居に対する変化などはありましたか?
山口馬木也さん:いつも大事にしようと思うことはありました。今回は、それはやっぱりそうだったと、思えたことが多かったなと思います。自分が芝居において、一番大事にしていこうと思うことです。できないですよ。だけど、やっぱりこういうことは大切にしなきゃいけないな、というのは再確認できました。
━━どんなことを大切にされているんですか
山口馬木也さん:芝居の僕の役というのは、僕が作っているんじゃなくて、相手が作っているんです。自然が作ってくれたり、照明であったり、カツラだったりする。自分がこういう役を作ってやろう、自分でやろうというのが、先に立っちゃうこともありますが。
多分、僕が今おしゃべりをしていて、僕であろうとすることなんて、微塵も考えていないじゃないですか、僕は僕だから。じゃあ僕を作ってくれているのは、誰かというと、相手なんです。
━━ほおーっ!
山口馬木也さん:今インタビューしていただいているのも、関係性なんですよ。現場にいても、相手によって僕は生かされるんだ、いろいろ奇跡を起こしてくれたなあと。そこに身を置く。
さっき言った刀もそうですが、脚本を読んでセリフを覚えている時点では、考えて、自分でこうするどうするというのは、否が応でも考えちゃいます。
それで現場にいて、風が吹くのか、暑いか寒いか、何が起こるか。そういった意味では、芝居は、全部アドリブであるべきです。どうやって起こるかというと、自分のことは忘れる、って言うのは、やっぱりそうだったと。おぼろだけど、確認できました。
そんなことはできませんよ。言っていてもできない。けれど、理想としてある。ちょっと近づけたかな。
不安のままでいい
━━山口さんは、小さいころからずっと俳優を志していらっしゃったのですか?
山口馬木也さん:遅いです。俳優を始めたのは。25歳とか、ちゃんと仕事をやり始めたのは、27、8歳ぐらい。それまでは全然で。大学も油絵科だったし、どっちかというと、絵を描いていたんです。
━━私も今はモデルの仕事もしているんですが、始めたのが遅いです。まだ下積みが続いているような状況なんですけど。実際に事務所に入ったというのが、まさに25歳ぐらいで。
山口馬木也さん:読者モデルじゃなくて?
━━フリーでちょっと活動していて、今の時代だと、ライブ配信で、ランウェイを歩くとか、そういうのもあったりして。山口さんは、下積み中にちょっと考えていたこととかありますか?
山口馬木也さん:下積み時代に考えていたことは、僕はもう、単純にさっきも言ったけど、あまりにも自分ができいない。それが悔しくて最初はやっていました。どうやったら役者になれる? と考えていて、いまだに考えていて。それがまだ、ずっと続いているっていう感じで。
━━がむしゃらにっていう感じですか?
山口馬木也さん:いや、どうやったらいいかわからない、どうやったら役者になれるんだろう。役者だっていうけれど、それがなんたるかは、まだわかってないですね。
━━ちょっとわかります。仕事はさせていただいて、名乗っているけれど、まだゴールにたどりつけていないような。
山口馬木也さん:いろいろなお洋服を着るじゃない? 僕はモデルはやったことはないけど、多分よく似ていると思う。どこかで共通している部分はあると思いますね。
━━そうですよね。
山口馬木也さん:そこでじゃあ、自信を持って、地に足をつけてということは、多分、なくて。不安のままでいいんだな、と僕は、役者に関しては。モデルさんはわからないけれど。でも自信があるようなふりをして、やってるだけで。
本当に自信満々な人がでてきたら、多分鼻につくんだと思います。でもそれもいかに華やかに見せようかとか、そうやって頭を働かせて、だったらこういう風なつなぎ方をするとか、ランウェイを素敵に歩こうとかは、やっぱり同じことではないかな。私は可愛いから、カッコいいから見てという人は前提としてはあるんだろうけど、多分そうじゃないですよね。
━━そうじゃないです。
山口馬木也さん:立たなきゃならない仕事だけど、本質は多分似ているんだろうねな。
━━不安なままでいいということが、心に染みました。
山口馬木也さん:絶対その方がいいですよ。しんどいけどね。
僕が知りたいこと
━━今の若者に向けて一言なにかありますか?
山口馬木也さん:何か困っているの? 今の若者は。
━━困っているわけじゃないですが。
山口馬木也さん:今の若者に向けて言う言葉は持ち合わせていないんですよね、そんな大人じゃないんで。ただ、世界が広がりやすいから、そこにみんなチャレンジしていくのは、凄くいいことだし、僕にはできないから。すげーな、って思って見ているんだけど。そういう人たちが、ごくごく身近な、手が届く範囲を見たときに、何が見えるのか、むしろ教えて欲しいですね。
━━逆に教えて欲しいっていう。
山口馬木也さん:YouTubeとか、インフルエンサーという人たちがいて、それがどんどんどん広がっていって、それがキュッとしたものを見たときに、どういうものが見えるんだろう。僕と同じ感覚なのか、もっと別なものが見えるのか、しゃべってもわからないんですよ。今の若い人たちはすごいなとしか思っていない。お芝居一緒にしてても。
僕らの時代と全然違いますね。今の人たちの方がよっぽどしっかりしているし。しっかりしなければいけない時代になっているし、経済的にも、いろいろなことで。だから価値観も何もかも全然違うから、僕から言えることはなんもないんです。
ただ、近場しか見えていない僕らの世代と同じ目線で、彼らが近場に目線を送った時に、どういうことを思うんだろうな? というのは知りたいですね。どう見えているのかな?
世代を超えて話し合う
━━どう見えてるんですかね。みんなやりたいことをやるというスタンスの方が、私の周りは多くて、あたりまえに、今までの時代だったら、大学卒業して会社員をして、家族を作ってという流れがある中で、新しい職業が生まれたと言うのもあって。
山口馬木也さん:そうなんですか。俺らの時代は、時代がそうだったんだろうな、やりたいことがあってもやれなかったんです。洗脳されていたのか抑圧されていたのか、仕事っていうのはつらいし、仕事っていうのはこういうもんだし、っていうところでやっていました。でも、今の人たちはすごく選択肢が多くて、それを嫌う大人とかもいるけど、そんなことはどうでもよくて、
ただ、僕らの中では仕事は大変なものだという認識があったから、それはもう変えられない。僕はたまたま曲がりなりにも好きな仕事をしているが、それでも今の若い人たちとは感覚が違うだろうなと。面白いですね。
━━面白いですね。時代によって考え方が違うんですね。
山口馬木也さん:基本的に流れているものというのは人間だし、こういうもののルーツというものもあるわけです。どの国の人でも。そういう意味で、こういう作品を観て、いろいろな世代の人が語り合ったりするのも楽しいかもしれませんね。
━━おっしゃる通りですね。世代を超えて。ますます広がっていくといいですね。
山口馬木也さん:そうなるといいね。
━━はい、そうなっていく気がします。この作品はまだまだ話題が続いていくんだろうなって思います。本日は貴重なお時間をありがとうございました。
(取材/撮影 オライカート彩(インスタグラム))
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山口馬木也さんインタビュー その2
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山口馬木也さんインタビュー その4
侍タイムスリッパー
絶賛公開中
©2024 未来映画社
配給:ギャガ 未来映画社