『スタントマン 武替道 』映画レビュー 火を絶やさない心

世界の映画界に、とてつもないエネルギーを送り込んできたかつての香港映画は死んだのか? いや、そんなことはありませんよ、と旋風のように登場してきたのが、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』だ。世界的にも大ヒットし、日本でもロングラン。SNSでも上半期ベスト映画作品に推す声も多い。

『スタントマン 武替道』は、『「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」』のスタッフ・キャストが再び集結。アクションとヒューマンストーリーのブレンド具合は程よく混じり合い、今と昔の香港アクション映画の世界が二重写しになって浮かび上がる。

香港映画が最高潮に輝いていたころ、アクション監督のサム(トン・ワイ)は第一人者だった。怪我の多少はなんのその、危険を顧みないのが普通で華麗で熱いアクションのためなら何でもする時代。だがちょっとした行き違いが大きな事故につながってしまった。サムのキャリアはストップしてしまう。

30年後、サムにもう一度声がかかった。香港映画の火を絶やしてはならないと。だが、映画の世界は様変わりしていた。アクション助監督として声をかけたレイ(テレンス・ラウ)とともに、サムは香港アクションにエネルギーチャージできるのか。

撮影現場での新旧の方法の違いによるいさかい、仕事のためにないがしろにしてきた家族への思い、夢にしがみつきたい欲求。壁を乗り越えるために必要なもの。ここでは一言、それは「香港魂」と呼ばれる。香港魂が、最高潮に燃え上がれば、昔の香港映画が持っていたエネルギーを郷愁以上の強さで蘇らせることができるのだろうか。そしてそれは、新たな香港伝説の誕生にもつながっていくはずだ。

原作、監督、編集を手掛けたのは、幼い頃から香港アクション映画の熱狂的マニアで、『ツインズ・ミッション』(07)で双子の悪役として映画デビューを果たし、スタントマン&俳優修業の傍ら短編映画で腕を磨いたアルバート・レオン&ハーバート・レオン。

スタントマン 武替道
2025年7月25日全国公開
2024年製作/114分/G/香港
原題または英題:武替道 Stuntman
配給:ツイン
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