『映画を愛する君へ』解説
『映画を愛する君へ』とは
フランスの名匠アルノー・デプレシャン監督が、映画の引用、インタビューやドキュメンタリー、そしてフィクションで描く映画賛歌。アルノー・デプレシャンは、1960年生まれ。フランス国立高等映画学院で学び、デビュー作『二十歳の死』で数々の映画賞を受賞した。2016年、第69回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門の審査員に選出されている。
主な作品は、
1991 二十歳の死
1992 魂を救え!
1996 そして僕は恋をする
2000 エスター・カーン めざめの時
2004 キングス&クイーン
2008 クリスマス・ストーリー
2013 ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して
2015 あの頃エッフェル塔の下で
2017 イスマエルの亡霊たち
2022 私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスタ
『映画を愛する君へ』での自伝的ストーリーの部分は、『そして僕は恋をする』『あの頃エッフェル塔の下で』でマチュー・アマルリックが演じたポール・デュダリスを主人公として、4人の俳優が演じている。初めて映画館を訪れた幼少期はルイ・バーマン、16歳を『落下の解剖学』のミロ・マシャド・グラネール、22歳を『最後の決闘裁判』などの人気俳優のサム・シェムール、30歳を『みんなのヴァカンス』
サリフ・シセ。
『映画を愛する君へ』映画レビュー 映画がもっと好きになる
好きなものがあることは幸せなことだ。好きなものを探求したり、語ったり表現したりすることは、もっと幸せになることだ。
『映画を愛する君へ』は、映画が好きでたまらない映画監督アルノー・デプレシャンが、自由自在に表現した作品。50作以上の映画のシーンを含め、映画の歴史やドキュメンタリーがあり、コメントあり、ドラマあり、思い出あり。見終わったときには、うっとりとした気分が心臓あたりで飛び跳ねているようだ。
テーマもある。映画を見るとはどういうことなのだろう。映画とリアルな世界との関係はどうなっているのだろう。答えはない。それは私たち一人ひとりが答えることだから。
ときおり挟まれる50以上の映画シーンは、次から次へとスクリーンをにぎやかに飾る。圧巻だ。ハッとさせられ息をのんでしまう。改めてこの映画はそんなにすごい映画だったのかと、思い知らされる映画もあった。例えば、『ブロークン・アロー』や『ダイ・ハード』。特に大きく扱われている作品もあった。『フローズン・リバー』もその一つだ。
『フローズン・リバー』は2008年のコートニー・ハント監督作品。サンダンス映画祭:グランプリ、ストックホルム国際映画祭グランプリ、インディペンデント・スピリット賞、主演女優賞、セントラル・オハイオ映画批評家協会賞主演女優賞(メリッサ・レオ)など数々の賞に輝いた評価が高い作品。古くもあり配信にないこともあり日本では忘れられた名作だ。
『映画を愛する君へ』の中では、『フローズン・リバー』の出演者でモホーク族の女性ライラを演じたミスティ・アッパムにスポットライトを当てる。『フローズン・リバー』で評価が上がり、その後クエンティン・タランティーノ監督の『ジャンゴ 繋がれざる者』などにも出演。彼女が若くして亡くなっていたのは、『映画を愛する君へ』を見るまで知らなかった。
その映画を見たときの状況と感じた喜びや悲しみが激流のように溢れだす。これも『映画を愛する君へ』の効果のひとつだ。
デプレシャン監督が尊敬するアメリカの哲学者スタンリー・カベルやフランスの批評家アンドレ・バザンの引用もフランス映画らしさがある。まじめに映画に向き合うことで恩恵は限りなく大きくなる。そんな風に思わされた。間違いないのは、より映画が好きになり、寄り映画がわかるような気がするところだ。
映画を愛する君へ
1月31日(金)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
© 2024 CG Cinéma / Scala Films / Arte France Cinéma / Hill Valle
監督・脚本:アルノー・デプレシャン 脚本:ファニー・ブルディーノ 製作:シャルル・ジリベール
共同製作:オリヴィエ・ペール 音楽:グレゴワール・エツェル 撮影:ノエ・バック
衣裳デザイン:ジュディット・ドゥ・リュズ
出演:ルイ・バーマン クレマン・エルヴュー=レジェ フランソワーズ・ルブラン ミロ・マシャド・グラネール(『落下の解剖学』) サム・シェムール ミシャ・レスコー ショシャナ・フェルマン ケント・ジョーンズ サリフ・シセ マチュー・アマルリック(『フレンチ・ディスパッチ』)
2024年/88分/フランス/原題:Spectateurs! 英題:Filmlovers!/カラー/5.1ch/2.35:1日本語字幕:福原龍一 後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ 配給:アンプラグド