
マッツ・ミケルセンは、今必ず観なくてはならない俳優だ。その円熟度は今が旬。と思いつつ、マッツ・ミケルセンは、今までずっと旬だったし、これからもずっとそうなのだろう。
彼の繊細な演技とスター性を堪能するには、『愛を耕すひと』は外せない作品だ。なぜなら『愛を耕すひと』はデンマーク映画だから。かの名作『007カジノロワイヤル』でハリウッド映画に進出し、多くの出演作があるマッツ・ミケルセンだが、ハリウッド映画ではアウェイプレイヤー。マッツ・ミケルセンの輝きの一面しか見ることができない。彼が的確にカットされた宝石の輝きを放つのは、やはりホームグラウンドの北欧映画だ。
時は18世紀。場所はデンマークの荒野。一人の男がいまだかつて誰も勝利したことのない闘いに挑む。男は、貧しい退役軍人のルドヴィ・ケーレン大尉(マッツ・ミケルセン)。ルドヴィが求めているのは、“貴族の称号”。彼は荒野の開拓を目指す。
『愛を耕すひと』の物語は、よどみなく壮大な世界を描く。極まった悪と過酷な自然が、ルドヴィに襲い掛かってくるのだが、その悪の凶暴さは通常レベルを超える。歴史ものだからこその激しさだ。ルドヴィの敵は、土地の有力者のフレデリック・デ・シンケル(シモン・ベンネビヤーグ)。彼は世界をカオスだと言い放つ。カオス対秩序(農業)。ルドヴィは意思と知識と体力で、どれだけのものを成し遂げるのか。
最初は、ルドヴィも好感が持てるタイプではない。元は庭師で軍隊上がり。暴力はお手の物。いつもしかめ面。このままいくのかなと不安なところ、彼の素晴らしさを認める人物が登場する。敵役の婚約者候補でノルウェーの貴族女性エレル(クリスティン・クヤトゥ・ソープ)だ。それ以降、観客はマッツ・ミケルセンの演技の深みを思い知らされる。さすがマッツ。視線ひとつで世界を変える。
その変化こそが『愛を耕すひと』の一番の魅力だ。猛々しさから移り変わる道筋のまろやかさと香りが、この作品を特別な味で包んでいる。監督はマッツ・ミケルセンと『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(12)でも組んだニコライ・アーセル監督。
愛を耕すひと
2025年2月14日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
ⓒ2023 ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, ZENTROPA BERLIN GMBH and ZENTROPA SWEDEN AB
配給:スターキャット、ハピネットファントム・スタジオ
監督:ニコライ・アーセル
脚本:ニコライ・アーセル、アナス・トマス・イェンセン
原作:イダ・ジェッセン「The Captain and Ann Barbara(英題)」
出演:マッツ・ミケルセン、アマンダ・コリン、シモン・ベンネビヤーグ、メリナ・ハグバーグ、
クリスティン・クヤトゥ・ソープ、グスタフ・リン
原題:Bastarden
製作年:2023 年
製作国:デンマーク、スウェーデン、ドイツ
上映時間 127 分
レーティング:G
字幕翻訳:吉川美奈子
後援:デンマーク王国大使館
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