『ヒプノシス レコードジャケットの美学』

1968年、ストーム・トーガソンとオーブリー・パウエルが共同で創立した

イギリスのデザイン・アート集団「ヒプノシス」は、

ケンブリッジでピンク・フロイドのメンバーと出会い、

ジャケットやツアーポスターの制作を開始。

後にピーター・クリストファーソンが加わり、

1970年代を中心にピンク・フロイド、ジェネシス、レッド・ツェッペリン、

ポール・マッカートニーら数々のアーティストのカバーアートを創作した。

斬新・奇抜・洗練……

あらゆる言葉が相応しいその独創的なデザインは、

それまで宣伝用パッケージにすぎなかったアルバム・ジャケットを

芸術の域に高めた。

本作では、ストームとオーブリーをはじめ、

ふたりを支えたカメラマンやグラフィックのスタッフ、

レジェンド・アーティストたちによる貴重なインタビューを、

数々の写真や映像とともに収録。

半世紀の時を超え、今なお音楽史に燦然と輝く

ヒプノシスのジャケットデザインの真相に迫る。

出演は、ヒプノシスのオーブリー・パウエル、ストーム・トーガソン、

ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズ、

デヴィッド・ギルモア、ニック・メイスン、

レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジ、ロバート・プラント、

10ccのグレアム・グールドマン、オアシスのノエル・ギャラガー、

そしてポール・マッカートニー、ピーター・ガブリエル。

監督は、『コントロール』(2007年)のアントン・コービン。

ちなみに、『コントロール』はイギリスのロックバンド、

ニューオーダーの前身であるジョイ・ディヴィジョンのボーカルで、

23歳で自殺したイアン・カーティスの半生を描いた伝記映画である。

オランダ生まれのアントン・コービンは

そもそもポートレート写真家として知られ、

彼の被写体となったのはマイルス・デイヴィス、シナトラ、

バロウズ、トム・ウェイツと錚々たる顔ぶれだ。

また、ロック・フォトグラファーとして、U2、デヴィッド・ボウイ、

ビョークらを撮影し続けてきた。

ドキュメンタリー『ヒプノシス レコードジャケットの美学』は

オーブリー・パウエルとストーム・トーガソンを中心に

アート集団『ヒプノシス』で生まれた数々の偉業が誇らしげに、

そしてホラ吹き話のように膨れ上がり、やがて萎んでいくさまを遠慮なく語る。

その針先となったのが、MTVの出現か、と思わせる見事な幕引きで一気呵成に!

この興奮は暗闇のスクリーンで堪能したい。

(武茂孝志)

『ヒプノシス レコードジャケットの美学』

2月7日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

原題 Squaring the Circle (The Story of Hipgnosis)

製作年 2022年

製作国 イギリス

配給 株式会社ディスクユニオン

初公開日 2025年2月7日

上映時間 101分

製作会社 Raindog Films

ジャンル ドキュメンタリー