『SALAAR/サラール』映画レビュー ブラバースの雄姿再び!荒ぶる魂が無双する

日本で大人気になったインド映画のヒット作は、4作品ある。1998年に日本で初公開された『ムトゥ 踊るマハラジャ』、2013年に公開された『きっとうまくいく』、2017年より公開された『バーフバリ』二部作、そして、2022年の『RRR』だ。

普段はインド映画を見ないという人も、そもそも映画を映画館で見ないという人も巻き込んで、大ヒットした。そのおかげもあって、インド映画は歌とダンスというイメージがさらに強まった。それが悪いというわけではないけれど。

だが、他にも、絶対見るべきモンスター級のインド映画作品がある。『K.G.F』だ。日本では2023年に『K.G.F:CHAPTER 1 & CHAPTER 2』と2作品同時公開された。謎に満ち、シャープでクールな、とんでもないレベルのアクション巨編だった。残念ながら日本では、上記の4作品のような知名度を得ることはできなかったが、個人的には、『バーフバリ』と同じぐらい、あるいはもっと好きな作品だ。

そして、今回の『SALAAR/サラール』。『K.G.F』のプラシャーント・ニール監督と、『バーフバリ』で王を演じた主演俳優、プラバースが組んだというだけで、鳥肌が立つほど興奮してしまう。

冒頭のシーンで息を呑む。中心には巨大な男。闘技場だ。周囲の人だかりに声をかけている。「誰でもいいから、かかってこい!」。かかっていけば、すぐさま大傷を負って退場ということになるのは間違いない。そこに、一人の少年が立つ。誰が見たって、太刀打ちできるはずがない。その少年こそが、デーヴァだ。彼は親友ヴァラダのために、大男と対峙する。勇気と頭脳がある。誰にも思いつかない方法で、彼は大男と闘う。

プラシャーント・ニール監督作品の個性的な持ち味は、『SALAAR/サラール』でも健在。スケールの大きい世界観、お洒落で粋で、キッレキレのアクションが次から次へと炸裂していく。

ただし、ブラバース演じる、大人になったデーヴァは、戦わない。いつまでも戦わない。いったん、彼が動けば、そこは恐るべき戦火が巻き起こるだろう。はたして彼はいつ動くのか。

多彩で大勢の登場人物、現代インドの秘密にして謎の地区カンサール、入り組んだストーリー、二重三重の謎。ラストの謎が明かされ、伏線が回収されるシーンの鮮やかさは見事だ。荒ぶる魂が無双するデーヴァは、雄大な姿で、古代の神にも王にも見えてくる。

残念なことに『SALAAR/サラール』は、『K.G.F』のようにCHAPTER 1 、CHAPTER 2の同時公開とはいかなかった。『SALAAR/サラール CHAPTER 2』を見ることができるのは、もう少し先のようだ。

(オライカート昌子)

SALAAR/サラール
7月5日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ツイン
監督・脚本:プラシャーント・ニール『K.G.F』シリーズ
出演:プラバース『バーフバリ』シリーズ、プリトヴィラージ・スクマーラン『セルロイド』、シュルティ・ハーサン『ザ・フェイス』、ジャガパティ・バーブ『ランガスタラム』
2023年/インド/テルグ語/シネスコ/5.1ch/174分/字幕翻訳:藤井美佳/字幕監修:山田桂子/提供:ツイン、Hulu/配給:ツイン PG12