ある愛へと続く旅をひとことで言えば、様々な食材を取りそろえた豪華なディナーのような作品だ。愛あり、戦争あり、耐え難い運命あり、様々な要素が、大河ドラマ的壮大感を生んでいる。ペネロペ・クルスが主演し、『イントゥ・ザ・ワイルド』、『スピード・レーサー』のエミール・ハーシュ共演。監督は『赤いアモーレ』のセルジオ・カステリット。
視点が大きなカギとなるところが、この映画の一番の魅力だと思う。『羅生門』や最近では『桐島、部活やめるってよ』のように。『ある愛へと続く旅』は一見、なだらかにストーリーが進んでいくように見える。最後にどんでん返し的な大きな秘密が明らかになるまで、視点が逆転と衝撃を生む映画だとは思いもしなかった。
ローマに住む中年の主婦、ジェンマ(ペネロペ・クルス)のもとに電話がかかってくる。それは彼女の若き日を再体験するボスニアへの旅へと誘う。
戦争が起こる前の平和でボヘミアンの芸術家が集う仲間うちで、彼女はアメリカ人のカメラマン、ディエゴ(エミール・ハーシュ)と恋に落ち、結婚したのだった。一見王道ラブストーリーのようでもある。その後、二人の幸福に水を差す出来事が明らかになる。妊娠と流産が繰り返して起こり、ジェンマの妊娠できる確率は1パーセントに過ぎないというのだ。
このあたりにくると、見ている側はあれっ?と思う。ごく普通の夫婦の物語に思えるからだ。ボスニアや戦争との関連は、後半にに持ち越されるのだ。
紆余曲折もあるし、時代も飛び飛びになり、語り口はジグザグ進むが、最後までくると、それが、ラストで最大の効果を生むための伏線だったと気づく。なんて長い伏線なんだろう。
なお、この映画にでてくる衝撃的な事実は、(私は知らなかったが)結構有名なことらしい。すべての謎が解けた時、「ある愛」の大きさに驚かされ、深い余韻となって、心に残る。 (オライカート昌子)
ある愛へと続く旅
2012年 イタリア・スペイン映画/ドラマ・恋愛・戦争/129分/原題:VENUTO AL MONDO
TWICE BORN/監督: セルジオ・カステリット/出演・キャスト:ペネロペ・クルス(ジェンマ)、エミール・ハーシュ(ディエゴ)、アドナン・ハスコヴィッチ(ゴイコ)、
サーデット・アクソイ(アスカ)ピエトロ・カステリット(ピエトロ)、ジェーン・バーキンほか/配給:コムストック・グループ
2013年11月1日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
『ある愛へと続く旅』公式サイト http://www.aru-ai.com/