『熱烈』映画レビュー ラストの盛り上がりは極上!ブレイキンダンスで描く青春と情熱

青春成り上がり映画は、それだけでも熱いのに、その熱さを極限にまで高めているのが映画『熱烈』だ。真正アスリートであるブレイキンダンサーが自分の限界に挑戦していく姿を描く。注目の俳優ワン・イーボー主演に起用。もともとダンサーであるワン・イーボーが、得意分野でエネルギーを100%発揮。その熱さには、痺れるしかない。

強調しておきたいのは、ダンスや人気俳優を起用したからと言って、アイドル映画のようなぬるさは全くないこと。撮影中、けが人も続出するほど危険な技が飛び交う。そして、シーンの濃さや展開のキレなど映画としての完成度は高い。

ワン・イーボー演じる陳爍(チェン・シュオ)には、夢がある。プロダンスチームに所属すること。2019年にプロダンスチーム「感嘆符!」のオーデションを受けたけれど、落ちてしまった。今は、母がやっている料理と蝋人形の館の手伝いとアルバイトを掛け持ちし、家の借金を返そうとする日々だ。ダンスは続けているけれど。

そんなある日、彼に「感嘆符!」のコーチが訪ねてきた。カリスマメインダンサーのケビンの代役として練習に参加して欲しいというのだ。陳爍は嬉しくてたまらない。これは待っていたチャンスかもしれない。

だが、試練はいくつもやってくる。陳爍の前に立ち塞がるのは、二人の敵だ。一人は、トップダンサーのケビン。そしてもう一人は、コーチ、ディンレイその人だ。

コーチを演じるのは、チャウ・シンチーの『西遊記 はじまりのはじまり』で孫悟空を演じたのをはじめ、数々の話題作に出演し、今や中華圏映画のトップスターである、ホアン・ボーだ。

『熱烈』のコーチ役でも、極め付きの演技力と最上級の愛嬌で魅力全開。主演のワン・イーボーを押しのける勢いで、前面に躍り出てくる。ここで気がついた。熱烈はダブル主演映画だったのだ。いや、チーム映画とも言うべきか。

ありったけの情熱を込め、好きなことに全力に取り組めること、夢が目の前にあることは、幸せなことだ。多くがそれを望むけれど、方法は違う。それぞれの夢がぶつかるのも必然。

『熱烈』では、陳爍(チェン・シュオ)、ケビン、コーチの間の衝突と抵抗が熾烈だ。三者三様の思わくの交錯は、ブレイキンダンスの熱気につながり、ラストの極上の盛り上がりで完成する。これぞダンス映画、そして青春成り上がり映画のマックス最上級だ。

ところで、ワン・イーボーは、2024年に『無名』、『ボーン・トゥ・フライ』、本作『熱烈』の主要主演作が公開された。テストパイロットを演じたスカイアクション『ボーン・トゥ・フライ』では、輝かしいスター性、『無名』では陰のあるスパイの存在感とアクション、そして、『熱烈』では、ひたむきな好青年。同じ俳優とは思えないほどの変化だ。演技のふり幅の広さこそ、彼の最大の魅力なのかもしれない。

『熱烈』の監督は、俳優としても活躍するダー・ボン。ワン・イーボーとは、『無名』で共演している。

(オライカート昌子)

熱烈
9/6(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
配給: 彩プロ
©Hangzhou Ruyi Film Co., Ltd.
監督:ダー・ポン
出演:ワン・イーボー、ホアン・ボー、リウ・ミンタオ、シャオ・シェンヤン、ラレイナ・ソン
ワン・フェイフェイ 脚本:スー・ビョウ、ダー・ポン 撮影:ルイ・ジョン
2023/中国/中国語/シネマスコープ1:2.35/124分/原題:熱烈/字幕翻訳:神部明世/配給:彩プロ/映倫G