『1950 鋼の第7中隊』映画レビュー 二度とないレベルの圧倒的スケール感

朝鮮戦争での最悪の闘いが初めて描かれる。初めてで困難な映画だからこそ、歴史的意義がある。息もつかせないほどの壮絶アクションは、強い引力を持つ。中国映画界が全力で送り出した戦争スペクタクル映画が『1950 鋼の第7中隊』だ。

水上生活者の年老いた両親と弟のところに、国共内戦の長い戦闘を終え、中国人民志願軍第9兵団 第7中隊長の伍千里(ウー・ジン)が兄の遺骨を抱えて帰ってきた。彼は与えられた土地に家を建て、家族と住むことを夢見ていた。

ゆっくりするのも束の間、再び帰隊命令が下される。1950年9月、朝鮮戦争に介入した米軍を中心とする国連軍が仁川に上陸。制空権を掌握した米空軍が中国朝鮮の国境まで迫りくる。建国間もない中国は、米軍が攻め込んでくる脅威に直面していた。果たして新生中国は、米軍の進軍を阻むことができるのか。

伍千里は、150名の第七中隊を率いて、アメリカ軍との戦いに身を投じる。圧倒的戦力の敵以外にも、零下40度以下の寒さも軍に襲い掛かる。

3時間近い上映時間、一万人を超えるエキストラ、壮大な戦いを描くこの映画の監督は、自らの個性と長所を最大限に生かした、チェン・カイコー(陳凱歌)、ツイ・ハーク(徐克)、ダンテ・ラム(林超賢)の3人だ。大ヒット作や高評価作品が多い中国でも指折りの実力派だ。

そのかいあってか、この映画には退屈で説明的な部分はほとんどない。会議もすぐに終わる。ナレーターが説明することもない。それなのにわかりやすい上、リズムに心地よさがある。各所に、人間ドラマを挟みながらも、戦闘から戦闘へ、クライマックスが、次から次へと連続する。抜群に面白い戦争映画になっている。

スケール感は、二度と出会えることのないレベルのものだ。例えるなら、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『アバター』のような。

希望に満ちた生まれたばかりの中国を描いている以上、国策映画的宣伝要素はないとは言えない。でもそれを上回るエネルギーこそ、『1950 鋼の第7中隊』の一番のみどころだ。

(オライカート昌子)

1950 鋼の第7中隊
9/30(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか、全国ロードショー!
配給:ツイン
© 2021 Bona Entertainment Company Limited All Rights Reserved.
監督:チェン・カイコー(陳凱歌)、ツイ・ハーク(徐克)、ダンテ・ラム(林超賢)
出演:ウー・ジン、イー・ヤンチェンシー、ドアン・イーホン、ホアン・シュエン、
2021/中国/中国語・英語/カラー/シネスコ/5.1ch/175分/原題:长津湖/字幕翻訳:河合彩子/R-15
提供:ツイン、Hulu 配給:ツイン