『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』レビュー

シリーズ第9作を数えて、

試写室ロビーには、こんな会話で盛り上がるマスコミ関係者がいた。

「アイツ、どーなったっけ? 死んだっけぇ〜?」

「2、3作前で飛行機から落ちて死んだはずだよ」

「そーか〜。で、今回は続きかなぁ〜〜」

『ワイスピ』シリーズに、そんなコトはどーでもいいのだ。

そんなのカンケーね〜、なのだ。

監督だって、誰がどうしたこうしたナンテ、考えちゃいないよ。

てなことで、『ワイスピ』はいよいよアクション・コメディの域に突入した。

それまでのシリーズ8作品で全世界興行収入は5500億円を超える。

オリジナル・シリーズ作として、歴代2位の興行収入を記録。

世界18か所で撮影。

新作『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』の予告編映像は、

解禁後7日間で全世界4億8080万回以上の視聴回数を記録した。

データには、『ワイスピ』シリーズで破壊された車は、約2500台とある。

これは嘘だろ〜〜。

もっともっと多いだろ〜〜。

今年6月、フィリピンのドゥテルテ大統領が密輸犯の見せしめで

押収された高級車21台を破壊したニュース、ご覧になった方も多いはず。

メルセデス・ベンツ、ポルシェ、マクラーレン、ベントレーなど

総額1億3000万円もの車が中古のショベルカーで押しつぶされる映像は

かなりの過激さでショッキングだった。

けどね、『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』に比べたら、

そりゃ〜まだまだ甘い。赤ちゃんみたいなもんだ。

『ワイスピ』シリーズでは過去、数々の「違反」と「暴走」を繰り返してきた。

第1作では、公道での命がけレースに大はしゃぎ。

第2作では、橋の上から豪華クルーザーに大ジャンプ。

第3作では、東京の渋谷でドリフト走行。何千人もの歩行者を危険にさらした。

第4作では、フルスピード走行しながら、巨大タンクローリーの燃料強奪。

第5作では、銀行から4トンもの巨大金庫を

2台のダッチ・チャージャーで引きずり出し、そのまま公道を逃走。

第6作では、運転する車を超巨大な輸送機に連結させて、

離陸を阻止して大炎上。

第7作では、高層ビル内を車で駆け巡り、

そのまま隣の高層ビルに超絶ジャンプ。

第8作では、氷河をスパイク・タイヤで疾走しながら、

ついに原子力潜水艦と対決! と、きた。

そんな具合で『ワンスピ』シリーズは、すべてをやり尽くした。


あはは。

あとは、宇宙に飛び出すしかないでしょ。

ウソだろ!!! と、その瞬間がやってきた。

9作目の『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』で、ソレをやるのだ!

だから、「ついにアクション・コメディの域に突入した」なのだ。

困ったことに、ソレだけではない。

超、超、チョー強力な磁石を搭載した車が登場するのだ。

これが繁華街を暴走する。

これまた困ったことに、オンオフ切り替え可能、と、きた。

強引に引き寄せることも出来るし、弾き飛ばすことも出来る厄介なシロモノ。

並走する車、道端のゴミ箱、レストランの椅子、テーブルはおろか、

腕時計した人まで吸い寄せられる。

ならば、オフ(弾き飛ばす)切り替え場面を想像してごらんよ。

ほ〜ら、映画見たくなったでしょ。

今回も、序盤の吊り橋脱出シーンから見どころ満載。

上映時間143分の中に、

クライマックスがいくつあるか、数えてみてはどーだろう。

軽々とギネス記録を超えていくはずだ。

しかし、断言したい。

それらアクション・シーンの成功率はゼロに等しいことを。

あのスーパー・コンピューター富岳も、0・1秒とかからず、

「ノン」とハジキ出すだろう。

登場人物の関係性なんてクソ食らえ。

そんな予備知識なんて必要なく楽しめる。

オスカー女優のヘレン・ミレンやシャーリーズ・セロンも

ぶっ飛び演技で出演する『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』!

終映後、キンキンに冷えたビールでワイワイしよう。

羽目を外しすぎると、西村せんせいに怒られるからほどほどに、だ。

あはは。

(武茂孝志)

『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』

8月6日(金)より全国ロードショー

監督:ジャスティン・リン

出演:ヴィン・ディーゼル

   ミシェル・ロドリゲス

   ジョーダナ・ブリュースター

   シャーリーズ・セロン

   サン・カン

   ヘレン・ミレン

   などなど

原題:「Fast & Furious 9」

2020年/イギリス映画/スコープ・サイズ/ドルビーデジタル

上映時間143分/配給:東宝東和/提供:ユニバーサル映画

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