
1945年、沖縄県伊江島(いえじま)。
激しい攻防戦が展開される中、ふたりの日本兵が命からがら木の上に身を潜め、
日本の敗戦を知らぬまま2年もの間生き延びた。
そんな実話から着想を得た作家・井上ひさしが原案を遺し、
2013年4月、こまつ座にて上演された舞台「木の上の軍隊」が映画化である。
Bunkamuraシアターコクーンにて初演された「木の上の軍隊」は、
「父と暮せば」「母と暮せば」と並ぶこまつ座「戦後“命”の三部作」の
第二作に位置付けられる舞台でもある。
本土から派兵された厳格な日本兵を演じるのは
確かな演技力で日本の映画界を牽引してきた名優・堤真一。
沖縄出身の新兵に抜擢されたのは、数々の話題作で存在感を示す山田裕貴。
ダブル主演を務める堤と山田は初の共演ながら、
阿吽の呼吸で極限状態の兵士たちを、繊細かつ力強く、
人間らしい可笑しみをもって表現する。
監督と脚本を手掛けるのは、
『ミラクルシティコザ』(2021)のスマッシュヒットが記憶に新しい
沖縄出身の平一紘(1989年8月生まれの35歳)。
全編沖縄ロケ、伊江島で実際に生い茂るガジュマルの木の上で撮影を敢行。
終戦から80年、熾烈な地上戦が繰り広げられた沖縄戦を
必死で生き抜いた兵士の事実に基づく衝撃の物語は、
観る者すべてにさまざまなカタチで深く刻まれるだろう。
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太平洋戦争末期の1945年。
沖縄県伊江島に米軍が侵攻し、激しい攻防の末に島は
壊滅的な状況に陥っていた。
宮崎から派兵された山下一雄少尉と沖縄出身の新兵・安慶名セイジュンは
敵の銃撃に追い詰められ、大きなガジュマルの木の上に身を潜める。
圧倒的な戦力の差を目の当たりにした山下は、
援軍が来るまでその場で待機することにする。
戦闘経験豊富で厳格な上官・山下と、
島から出た経験がなくどこか呑気な安慶名は、
噛みあわない会話を交わしながらもふたりきりで恐怖と飢えに耐え続ける。
やがて戦争は終結するがふたりはその事実を知るすべもなく、
木の上で“孤独な戦争”を続けるのだが。
終戦から80年。
1964年生まれの俳優、堤真一は61歳。
1990年生まれのタレント、山田裕貴は34歳。
1989年沖縄生まれの新鋭監督、平一紘は35歳。
1934年生まれ、2010年75歳で人生を閉じた市民運動家でもある井上ひさし。
この「木の上の軍隊」には様々異なる思い入れがあるだろう。
たとえば、
ノーベル平和賞の憲法9条を有する国であっても、
唯一の被爆国であっても、
なんらその効力を発揮できず伝えられず傍観し続ける日本政府。
日米地位協定だの安全保障だの同盟国だの、そんなコトバで
沖縄だけに無理難題を押し付け続ける政府。
映画「木の上の軍隊」の終盤、山田裕貴扮する沖縄出身の新兵は
幼少期の思い出深い海を見たいと呟くのだが。
沖縄では今なおアメリカ兵の横暴がニュースで報じられている。
そして海、サンゴが消えていく。
そして今、
同盟国と言うが、トランプが気にくわないことがあれば関税は上がるという。
3ヶ月ごとに評価を下すと脅される。
石破じゃないが、舐められてたまるか! と思うだろう。
「木の上の軍隊」にはこんな感情も渦巻いているのだ。
「木の上の軍隊」
2025年7月25日(金)より、全国公開
出演:堤真一、山田裕貴
津波竜斗、玉代㔟圭司、尚玄、岸本尚泰、城間やよい、
川田広樹(ガレッジセール)/山西 惇
監督・脚本:平一紘
原作:「木の上の軍隊」(株式会社こまつ座・原案井上ひさし)
主題歌:Anly
企画:横澤匡広
プロデューサー:横澤匡広、小西啓介、井上麻矢、大城賢吾
企画製作プロダクション:エコーズ
企画協力:こまつ座
制作プロダクション:キリシマ一九四五 PROJECT9
後援:沖縄県
特別協力:伊江村
製作幹事・配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2025「木の上の軍隊」製作委員会