『エッフェル塔 創造者の愛』映画レビュー 恋愛か仕事か創造者が選ぶ究極の選択とは

映画『エッフェル塔 創造者の愛』は、パリのエッフェル塔を設計したギュスターブ・エッフェル(ロマン・デュリス)を主人公にした感動作。塔の完成までの苦闘と、ある女性との愛が、両輪のように調和して味わい深い。

恋愛か、仕事か。目の前にいる人を大切にすることに生きがいを持つか、たくさんの人を喜ばせることに、心を砕くか。ギュスターブ・エッフェルの選んだ生きる道が、日差しのように心に食い込んでくる。

パリの街にそびえるエッフェル塔は、1889年に完成し。高さは、312.3m。今やパリのシンボルとして知らない人がいないモニュメント。だが、その完成のためには、たくさんの試練を乗り越えなくてはならなかった。

ニューヨークの自由の女神を設計したことや、数々の巨大な橋の設計・施工により名声を得たギュスターブ。1889年にパリ万国博覧会が予定され、ギュスターブも、パリ万国博覧会のシンボルモニュメント制作のコンクールへの参加を予定していた。

彼が最初に考えていたのは、たくさんの人々の足として助けになる地下鉄。だが、あるパーティで思いがけない人に出会い、勢いで300メートルの高さの塔を建てると、宣言してしまう。

思いがけない人とは、突然いなくなってしまった思い出の女性、アドリエンヌ(エマ・マッキー)。彼女はギュスターヴの知り合いの記者と結婚していた。彼女はギュスターヴにとって忘れることのできない大切な存在だった。

塔の創造の過程と、ギュスターヴのアドリエンヌへの思い。それが発展しつつ、絡み合う。逆境や苦難もつきまとい、さらに濃厚な味わいの世界へと誘いこんでいく

仕事か愛かという疑問には、ひとつのセリフが、答えを示している。「あなたは、女を見るように塔を見るのね」。アドリエンヌの言葉だ。

19世紀末から20世紀初めというのは、ファッション、生活、建物、空気など、独特で豊かな世界が広がっている。その世界に触れたとき、何かが自分の中で生まれるような特別感がある。エッフェル塔の上からの眺めの素晴らしさも世界を体感できるとともに、まるでその時代にいるような臨場感が身を浸す。

(オライカート昌子)

エッフェル塔 創造者の愛
© 2021 VVZ Production – Pathé Films – Constantin Film Produktion – M6 Films
© 2021 VVZ Production – Pathé Films – Constantin Film Produktion – M6 Films
監督:マルタン・ブルブロン
キャスト:ロマン・デュリス、エマ・マッキー
2021年製作/108分/R15+/フランス・ベルギー・ドイツ合作
原題:Eiffel
配給:キノフィルムズ