『フェイブルマンズ』映画レビュー スピルバーグの映画の秘密が明かされる

スティーブン・スピルバーグ監督のどこが、そんなにすごいのだろう。今や名匠。ほぼ毎年、作品を発表し、どれも粒ぞろい。ワクワクするストーリーは、心を捉え離さない。エンタメ大作から、名作まで。去年もアカデミー賞にノミネートされ、今年もファイブルマンズで作品賞ノミネート。

彼の人生の秘密が明かされるのが、『フェイブルマンズ』だ。人生最初に見た映画。最初に撮った映画。最初に住んだ場所。次に住んだ場所。そして彼の人生に大きな影響を与えた出来事。スティーブン・スピルバーグが、スティーブン・スピルバーグである理由。それは秘密が解かれていく過程のようでワクワクさせられる。

ファイブルマンズは、スティーブン・スピルバーグの若き日の思い出を描いているのだが、その中で大きな位置を占めているのが、彼の父親と母親のこと。

父親は,IT技術者。転職を繰り返すたびに、出世していく天才的な存在。母親は、ピアニスト。結婚を選ばなければ、コンサートピアニストとして大きな成功を収めていただろう。つまり、理系と文系の父母の間に生まれた子供だ。

父は、息子の映画に対する情熱を、単なる趣味として見る。対して母は、魂の願いが映画を通して息子の中に息づいていることを知っている。

この分裂は、彼の作品の中でも見られる。スティーブン・スピルバーグが生み出した名作系の映画は、父に「映画は単なる趣味ではない、高尚な仕事」だと証明する理由もあって、どうしても作らなければならなかったのではないか。一方、大きな情熱を感じさせるエンタメ系の作品群は、好きなものをさらに愛する方法の一つとして描かれたのではないか。

『フェイブルマンズ』のみどころは、彼の愛する映画作りの原点が描かれているところだ。列車激突の興奮は、『激突』につながる。出世作で、何度見ても面白い映画だ。そしてカメラワークの妙。それは彼の習作で描かれているし、『ファイブルマンズ』のラストシーンで、その秘密が見えてくる。

そうだったのか、と膝を手でたたきたくなる瞬間だ。ファイブルマンズを見ることは、スティーブン・スピルバーグ作品だけでなく、どんな映画を見るときでも、映画を見る楽しみを倍増してくれることは間違いない。

(オライカート昌子)

フェイブルマンズ
2023年3月3日(金)全国公開
配給:東宝東和
監督・脚本:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:トニー・クシュナー 音楽:ジョン・ウィリアムズ 衣装:マーク・ブリッジス 美術:リック・カーター
編集:マイケル・カーン、サラ・ブロシャー 撮影:ヤヌス・カミンスキー
原題:The Fabelmans 配給:東宝東和 上映時間:151分 
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公式HP:https://fabelmans-film.jp/ ◆公式Twitter:https://twitter.com/fabelmans_jp #映画フェイブルマンズ