新たなタイムトラベル映画の傑作が誕生した。タイムトラベル的構造を持った作品は、傑作や良作がやけに多い気がするのだが、描ける次元が増える分、創る方の自由度が高くなるからかもしれない。
タイムトラベルといっても、『ルーパー』は未来から現在(2074年だが)への一方通行。タイムマシンは大きめの樽のような絶対入りたくないシロモノだし、タイムマシンで未来から現在へ送られるのは、殺される運命の人だけという設定なので、なおさら乗りたくない。
現在(2074年)では処刑人が、タイムマシンから被害者が姿を表わすのを、銃を構えて待ち構えている。その処刑人の一人を演じるのが、主演のジョセフ・ゴードン=レヴィットだ。殺し終わると、近所のひなびたカフェでコーヒーを飲みながらフランス語の練習をしているというのが、冒頭のシーン。
違和感があるのは、ジョーを演じるジョセフ・ゴードン=レヴィットの顔が微妙にいつもと違うから。声も違う、動きも違う。というのも、未来のジョーを演じるのがブルース・ウィリスなので、似させているため。
確かに若いころのブルース・ウィリスの面影をかすかに感じられる。それはともかく、自分が未来から現在に送られるということは、自分が自分を殺さなくてはならないということ。ブルース・ウィリスが登場するとしたら、とってもマズイことなのだ。
そんな風にストーリーは崩壊の予兆を感じさせて加速する。ところが、『LOOPER/ルーパー』が面白いのは、前半と後半と、2つの映画を見ているように趣が変わるところだろう。
前半もスリリングで楽しいが、物語のトーンが変わる後半はその何倍もの凄まじさで圧倒してくる。エンディングは輪が閉じるように前半の部分と後半の部分が調和し、深いテーマ性が押し寄せてくる。素晴らしいとしか言いようがない。(オライカート昌子)
LOOPER/ルーパー
2013年1月12日(土)丸の内ルーブル他全国ロードショー
オフィシャルサイト http://looper.gaga.ne.jp/