『アンネ・フランクと旅する日記』解説・あらすじ 映画レビュー

『アンネ・フランクと旅する日記』とは

「アンネの日記」は、第二次世界大戦下のオランダ、アムステルダムのユダヤ人の少女アンネ・フランクが書いた日記で、世界的なベストセラー。『アンネ・フランクと旅する日記』は、「アンネの日記」を原案にしたアニメーション映画。「戦場でワルツを」のアリ・フォルマンが、監督と脚本を兼任している。

アンネの空想上の友人キティが、現代のアムステルダムに現れるファンタジーとして描かれ、アンネの生涯と現代のアムステルダムでの冒険との対比がダイナミックな感動を呼び起こす。

『アンネ・フランクと旅する日記』あらすじ

ある嵐の夜、オランダ、アムステルダムのアンネ・フランクミュージアムでは、「アンネの日記」のオリジナル版が展示されることになっていた。オリジナル版が展示されたガラスケースが割れ、文字が動き出すと、そこにはキティーとアンネがいた。ふと、気づくと、キティーは現代のアンネ・フランクミュージアムに戻っていた。本の展示は大盛況だったが、キティーの姿はなぜか、誰にも見えないようだった。

アンネを探して、キティーはオリジナル版の本を持って外へ飛び出す。そうすると、キティーの姿は実体化し、誰とでも話すことができた。警察は本が盗まれたと捜索を始める。アンネについて詳しく聞いてきたキティーを怪しんだ警察は、キティーの後を追う。キティーは、新しい友人の助けを借り、もう一度アンネに会うためにアンネの名前が付いた病院や学校へ向かう。

『アンネ・フランクと旅する日記』映画レビュー

夢の中にいるようなファンタジーを描きながら、同時にリアルな感触を実写以上に感じさせてくれるのが、アニメーションのマジックだ。『アンネ・フランクと旅する日記』は特に。

『アンネの日記』は様々な形で世界に波及し、アンネの短い生涯とナチス・ドイツ時代のユダヤ人迫害を伝えてきた。

『アンネ・フランクと旅する日記』は、アンネがどんな少女だったのか、どんな日々を送っていたのか、今アンネを改めて知る必要があるのかどうかを伝えてくれる。さらにアンネを友達のように感じさせてくれる効果もある。

というのも主人公が、アンネが日記を宛てて書いた想像上の友人、キティが主人公だからだ。しかもキティは現代のアムステルダムに登場する。

空想の友人が現代に現れるだけでも飛躍的な設定だが、ある条件下でキティはアンネに会うことができる。ある状況下では、生身で現代の社会で友人を作ることもできる。アンネの日記の原本を巡っての冒険はスリリングでミステリアス。

アンネの幸せで満ち足りていた生活が、ナチスドイツの侵攻によって、崩されていく様子、健気に生きていく姿は感動的だけれど、それ以上に現代の世界の描写がメインとなっていくところがマジカルな力を感じるポイント。

アンネの世界は過去のものではない。今もある理不尽さ。それをスムースで軽快に愛情をもって伝えてくれるところが、『アンネ・フランクと旅する日記』の一番の見どころだ。

(オライカート昌子)

2021年製作/99分/G/ベルギー・フランス・ルクセンブルク・オランダ・イスラエル合作
原題:Where Is Anne Frank
配給:ハピネットファントム・スタジオ