『ドント・ブリーズ2』レビュー

恐怖体験といえば、東欧ハンガリーのブダペスト。

深夜0時20分開映。

よせばいいのに、旧市街にある古い石造りの映画館へ。

120万人虐殺の実話『ホテル・ルワンダ』を見ておきたかった。

深夜2時半、終映。

律儀にエンドロールまで見た観客は私ひとり。

これが運の尽きだった。

正面入り口は封鎖され、手探りでスクリーン横の非常口から脱出。

真っ暗な石畳の小路で方向感覚を失い、帰るべき宿が見つからない。

ゴツゴツとした石畳は、夜露に濡れて、

いま見た映画の髑髏(しゃれこうべ)に似ている。

遠くからコツコツと近づく不気味な人の影。

あっ、終わった、と思った。


ホラー映画『ドント・ブリーズ2』を見て、思い出した恐怖体験だ。

この映画、深夜の異国の地ブダペストで見たら震えが止まらないだろう。

ほほ〜、撮影場所はハンガリーのお隣、セルビアなのかぁ。

(場所によって)不気味さが一段と際立つ、賢明なロケ地だったと思う。

不気味で漆黒なる雰囲気の中、恐怖が語られるからファンには堪らない。

主人公は、スティーヴン・ラング扮する盲目の老人。

この老人がめっぽう強い。

家に忍び込んできた悪人たちを血祭りに上げていく。

2016年の前作同様、今回もアイデア満載のホラーが展開するが、

「今まで聞いた中で最も素晴らしい続編のアイデア

としか言いようがない!! 冗談ではなくて」

と、プロデューサーのサム・ライミは声高だ。


前作監督のフェデ・アルバレスも

「前作とは大きく異なるアプローチの“まるで違った続編”」と言及。

主人公を演じるスティーヴン・ラングも、

「前作と大いに親族関係にあるが、多くの意味で独自の代物」と答えている。

同感だ。前作とは全く異なる見事な続編だ。

監督、脚本担当のふたりが共に南米ウルグアイ出身なのも

アメリカ映画にはない独特な空気感を醸し出しているにちがいない。

さらに重要なポイントは、劇中で「戦争後遺症」、「麻薬カルテル」、

さらに「人身売買」というアメリカの闇を匂わせるシナリオだ。

映画の中のセリフで、「(敵地では)人も殺したし、レイプもした」なんて、

アメリカ軍人の告白、聞いたことある?

先日(8月10日)、アメリカのバイデン大統領が、

アフガニスタンからの米駐留軍撤退を改めて表明した。

アメリカ同時多発テロ以降、20年ぶりか。

すぐさまタリバンが攻勢を強め、複数の州都を占領。

国連によると、この1ヶ月で民間人1000人以上が戦闘で亡くなり、

未成年に対する残虐行為が日増しに増えていると警告している。

なぜだろうか、

映画『ドント・ブリーズ2』には、そんな警告もあるようで仕方がない。

異国ウルグアイのふたりが、アメリカ人スティーヴン・ラングをもって

今そこにあるアメリカの危機を叫んでいるのかもしれない。

(武茂孝志)

『ドント・ブリーズ2』

8月13日(金)全国ロードショー

監督:ロド・サヤゲス

脚本:フェデ・アルバレス/ロド・サヤゲス

制作:フェデ・アルバレス/サム・ライミ/ロブ・タバート

主演:スティーヴン・ラング

2021年/アメリカ映画/1時間38分/R15+

配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント