『ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結』映画レビュー

映画の中のワンシーンが、いつまでも心に残ることがある。思う出すたびにふわっと軽くなって、ちょっといい気分になったりする。『ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結』にもそういうシーンがある。その感覚は、”癒し”にも通じていて、この作品をアメコミ原作アクション映画を超えた、特別な作品にしている。

アクションエンターテイメント要素も盛りだくさんで、期待にも十分応えてくれるはずだ。特に、子ども心をしっかりと持ち続けている大人には。

前作の『スーサイド・スクワッド』は、危険でダーク、スタイリッシュな大人向け作品だった。比べると違いが際立つ。表面上は、コメディと遊び心とオタク魂がうまくブレンドされ、三つの輪になったのが、新生スーサイド・スクワッド(自殺部隊)。

前作から引き続きの登場となるキャラクターは、ハーレイ・クインと、スーサイド・スクワッドを率いるアマンダ・ウォラー。前作では、初登場ということもあって、華々しかったハーレイだが、今回はブルドーザー並みにたくましい。狂言回し的役割も担っている。破れた赤いドレスを着ていても、色っぽさにはに欠けていて、残念な気もした。ぬいぐるみ的キャラや人食いサメキャラなどが揃った、動物ワンダーランドには、「激しくてイカれてて、恐れを知らない(前作のセリフ)」女に、エロさはいらないのかもしれない。そういうシーンも、ないことはないのだけれど。

この作品を見ていて思い出したのは、スポンジ・ボブの世界観だ。ヒトデや一つ目、塔のデザイン。そしてカラフルなイメージもそう。独特な、緊張とゆるみのバランス感も共通項だ。”一つ目”は、実在する秘密結社のイメージとしても有名。それが倒されるクライマックスは、圧倒的にかっこいい。爽快感に酔ってしまった。

エンタメ超大作が、『ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結』の表面的な顔だとしたら、その奥にあるものこそが、”癒し”だ。キャラクターは、それぞれトラウマを抱えている。孤独感だったり、親との確執だったり、苦手なものがある。それがゆっくりと消えていく。その背後に流れるのは、マイケル・ジャクソンの歌う「ベンのテーマ」が、ふさわしい。実際には使われていないのだけれど。見ればわかるはずだ。

(オライカート昌子)

ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪党、集結
2021年製作/132分/R15+/アメリカ
原題:The Suicide Squad
配給:ワーナー・ブラザース映画
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