
特別な一日がある。映画『今日の空が一番好きと言えない僕は』で印象に残ったのは、その特別な一日だ。忘れられない一日。出会いがあった一日。その前とその後を永遠に変えてしまう。
ごく普通の一日もある。いつもと違うことは何一つ起こらない。大学へ行き、バイトへ行き、ご飯を食べて寝るだけの一日。
『今日の空が一番好きと言えない僕は』では、特別な一日の方が鮮やかにクローズアップされているけれど、心に残るのは、あたりまえの一日の方。異例なことは何も起きずに、ただスーッと過ぎていく日々。
主人公は、大学生の小西徹(萩原利久)。友達も一人しかいないし、みんなでつるんで楽しむこともしない。大学生活はパッとしない。理由があってしばらくは学校へも行けなかった。バイトは風呂屋の掃除。
そんな彼が気になっていた女性、桜田花(河合優実)と話す機会を得た。彼女はお団子頭。魅力的だけれど、見かける姿はいつも一人だった。話してみると、意外にも共通点が多かった。「これはセレンディピティ」と言ったのは、彼女の方だ。
セレンディピティとは、「セレンディップの三人の王子たち」というペルシャの昔話に由来する。「幸運な偶然を引き寄せる力」というのが一つの意味。映画では、2001年の『セレンディピティ』ケイト・ベッキンセール、ジョン・キューザック主演のラブコメで描かれた。
『今日の空が一番好きと言えない僕は』での、花との出会いは、本当にセレンディピティな幸運なものだったのか。ふわふわとしたラブコメにはない、皮肉と苦みがまぶされている。
特別な一日と普通の一日。インパクトのある出会いと、日常的な出会い。コントラストが映画の印象他にない味を付け加える。
監督は、『勝手にふるえてろ』、『私をくいとめて』の大九明子。『今日の空が一番好きと言えない僕は』は男性主人公の映画だけれど、インパクトとイキの良さを見せてくれるのは女性陣。衝撃の長台詞に注目。
今日の空が一番好きと言えない僕は
4月25日(金)全国公開
配給:日活
©️2025「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」製作委員会
原作:福徳秀介『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(小学館刊)
監督・脚本:大九明子
出演:萩原利久
河合優実 伊東蒼 黒崎煌代
安齋肇 浅香航大 松本穂香 / 古田 新太
製作:吉本興業 NTTドコモ・スタジオ&ライブ 日活 ザフール プロジェクトドーン
製作幹事:吉本興業 制作プロダクション:ザフール 配給:日活