『デシベル』映画レビュー 選択を許さない生と死の狭間の非情な運命

韓国映画の巨大スケールで描くダイナミックな映画の世界は、拡大して止まらない。『新感染 ファイナル・エクスプレス』シリーズは、高速鉄道を舞台にして、ゾンビ映画の新たな世界を作った。『白頭山(ペクトゥサン)大噴火』では火山噴火、『非情宣言』では航空機・病原パニック、そして、『デシベル』だ。

映画『デシベル』は、潜水艦内で幕を開ける。そして、釜山の街中に仕掛けられた“騒音反応型爆弾”が、サスペンスと、パニックアクションのレベルを押し上げる。

元海軍副長カン・ドヨン(キム・レウォン)のもとに電話がかかってきた。それは、ちょうど、一軒家で起きた爆破事件のニュースが流れた時だった。「次のターゲットは、サッカースタジアムだ。通報したり観客を避難させたら爆発する」。テロリストからの脅迫だ。

仕掛けられたのは、騒音が一定のデシベルを超えると制限時間が半減して爆発する特殊なもの。ドヨンは、状況を把握できないままに、5万人の観衆で埋め尽くされた釜山アシアード競技場に向かう。居合わせたジャーナリストの助けもあり、何とか大きな爆発は防げたものの、脅迫は止まらない。

次は、市民でごった返すプール、子どもたちが遊んでいる公園。騒音のコントロールが効かない場所だ。やがてドヨンの家族も狙われ、命の危険にさらされることに。

犯人は誰なのか、潜水艦内の出来事が影響しているのか。何が起きたのか、何が隠されているのか、ミステリー要素とともに、スタントなしのアクション、CGなしの爆弾シーンが臨場感と緊迫感を彩る。

爆弾を仕掛けた犯人は、意外に早く判明する。やがて、事件の背景を探る要素もプラスされ、非情な真相が明かされていく。

監督は「その怪物」のファン・イノ。主人公カン・ドヨンを『江南ブルース』のキム・レウォン。爆弾魔を『君に泳げ!』、『THE WITCH 魔女 増殖』のイ・ジョンソク。人気K-POPボーイズグループ「ASTRO」のチャウヌが映画初出演。海軍潜水艦音響探知下士官チョン・テリョンを演じている。

『デシベル』は、潜水艦や爆弾、アクションシークエンスの特徴が目立つが、ラストに迫ってくるのは、選択を許さない生と死の狭間の非情な運命。その厳しくも哀しい人間ドラマは見逃せない。

(オライカート昌子)

デシベル
11月10日(金)新宿バルト9 ほか全国公開
ⓒ 2022 BY4M STUDIO, EASTDREAM SYNOPEX CO., LTD, MINDMARK Inc. ALL RIGHTS RESERVED
配給:クロックワークス
監督: ファン・イノ
出演:キム・レウォン、イ・ジョンソク、チョン・サンフン、パク・ビョンウン、チャウヌ(ASTRO)
イ・サンヒ、チョ・ダルファン、イ・ミンギ
2022|韓国|110分|シネスコ|5.1ch|原題:데시벨|英題:DECIBEL|