『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』解説とあらすじ 映画レビュー 音楽と歴史の豪華さ満載ミステリー

『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』解説・あらすじ

『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』解説

『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』とは

第二次世界大戦下のロンドン。世界デビューを目前にして失踪した21歳の天才ヴァイオリニスト、ドヴィドル。彼に何が起きたのか。彼の行方を追うのは兄弟同然に育ったマーティン。

マーティンの探索の旅と、ドヴィドルを襲った数奇な運命を、クラシック音楽の美しい旋律とともに描く歴史音楽ミステリー。ブルッフ、バッハ、ベートーベン、パガニーニなどの音楽が格調高く響き渡る。

監督は、『レッドヴァイオリン』、『ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声』、『シルク』など音楽映画や歴史ものに定評があるフランソワ・ジラール。

「ロブ・ロイ ロマンに生きた男」「海の上のピアニスト」のロスが主人公マーティン、「クローサー(2004)」「ジェミニマン」のオーウェンがドヴィドルを演じている。幼少期のドヴィドルには、実際にヴァイオリニストであるルーク・ドイル。本作で映画デビュー。

『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』あらすじ

第二次世界大戦下のロンドンに、ポーランドから父に連れられてやってきたのは、9歳の少年、ドヴィドル。特別な音楽教育を受けるため、ドヴィドルは、ロンドンのマーティンの家に預けられた。同い年のマーティンとドヴィドルは、反発しあいながらも次第に兄弟のような関係を築いていく。

ナチスが台頭し、ポーランドに残った家族のことを心配しながらも、ドヴィドルはヴァイオリンの技術を伸ばしていった。そして、盛大な世界デビューコンサートの日を迎えた。順調にリハーサルを終え、本番前の緊張を解くために街へ出たドヴィドルだったが、時間になっても姿を現さなかった。彼に何が起きたのか。

30年後、父の後を継ぎ、音楽プロデュースの世界に生きていたマーティンは、ある音楽コンテストで演奏前にヴァイオリンに塗る松脂に唇を当てるしぐさをする青年を目にした。ドヴィドルと同じように。この少年は、ドヴィドルと何か関係があるのか。マーティンは、これをきっかけにドヴィドルを探す旅に出る。

『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』映画レビュー

『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』は、好奇心を掻き立てる音楽歴史ミステリーの醍醐味がたっぷり味わえる作品だ。クラシック音楽、ナチスによるユダヤ人迫害、そしてミステリーの三つの要素が心地よく配置されている。

映画の構成も三つの部分で成り立っている。映画の最初は、天才ヴァイオリニストが消えてしまうまで。みずみずしく牧歌的な味わいを堪能できる。

次に、兄弟のように育ったマーティンが、ドヴィドルを探す旅が、静かなのに強い決意を感じられる様子で。

最後は、ドヴィドルに起きた出来事が、たっぷりとした尺で描かれる。驚きと感動が心を浸してくれるけれど、驚かされるのは最後のシークエンス。三つの要素が映画を解き明かしてくれる。これが三角関係の映画だったしたら技が細かい。

後味として残るのは、失われてしまったものへの哀悼だ。ナチスに迫害されたユダヤ人たちだけでなく、最後までドヴィドルを信じ、すべてを失ってしまったマーティンの父に対する思いも深い。

(オライカート昌子)

天才ヴァイオリニストと消えた旋律
12 月 3 日(金)、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開
配給:キノフィルムズ
© 2019 SPF (Songs) Productions Inc., LF (Songs) Productions Inc., and Proton Cinema Kft
出演:ティム・ロス、クライヴ・オーウェン、ルーク・ドイル、ミシャ・ハンドリー、キャサリン・マコーマック
監督:フランソワ・ジラール
脚本:ジェフリー・ケイン
製作総指揮:ロバート・ラントス
音楽:ハワード・ショア
ヴァイオリン演奏:レイ・チェ
2019 年|イギリス・カナダ・ハンガリー・ドイツ|英語・ポーランド語・ヘブライ語・イタリア語|113 分|映倫区分:G(一般)
提供:木下グループ